ちあきの星空コラム
第257回 土星が月に隠される (2024/12/02)
遠ざかる紫金山・アトラス彗星
本コラム9月の第254回でお知らせしました紫金山・アトラス彗星が夕刻の西の空に実際に姿を現し、10月(第255回)の追加掲載及び11月(第256回)掲載の写真に掲げましたように長く尾を引いた立派な姿を見ることができました。
11月に入ってからは、地球からだんだんと遠ざかりつつある中で、肉眼では見えなくなりましたが、天体望遠鏡でははっきりと確認でき、下の写真のように尾を持った姿として撮影することができました。
土星が月に隠される
12月8日(日)の午後6時過ぎに土星が月に隠されます。続いて午後7時台には月の背後から出現します。とてもめずらしい現象ですからぜひご覧ください。
肉眼でも目の良い人には見えるかもしれませんが、双眼鏡か天体望遠鏡を使えば確実に見ることができます。
なお、天体望遠鏡で観察すると、土星の環の傾きが上の写真のように広がっておらず、環はもっと細く見えることをご承知おきください。また、土星が隠される月の部分は、月の輝いている部分ではなく、暗い部分に隠されることをご承知おきください。なお、土星の出現は、月の輝いている部分からとなります。なお、この現象は関東地方では見られますが、日本全域でいうとみられない地域もありますので、ご注意ください。晴れてみられることを期待します。
ふたご座流星群が今年も見られる
彗星などが宇宙空間にまき散らしたダスト(チリなど)が地球に落ちてくると流れ星(流星=りゅうせい)となります。毎年12月14日前後に地球が通過する公転軌道上にあるダストから発する流星は、ふたご座流星群といって、毎年この時期に夜空をかざってくれます。寒い夜でも見る価値がある明るい流星が見られる流星群です。
流れ星は、短くシュッと流れるものからスーとゆっくり1秒以上かかって流れるものまでさまざまで、さらに消滅前に爆発するように見えるもの、色が変化していくものなど楽しむことができます。ふたご座流星群が見られる期間は、12月10日から18日まで。極大日は13日の夜から14日の明け方にかけてとなります。この時は、1時間当たり40個程度が流れるといわれています。
ただし、今年は月明かりの影響が大きく満月前の明るい月が輝いていますので、月の方角を避けて星空を仰ぎ見ましょう。良く見られる時間帯は、14日の午前3時過ぎに月が西の空に沈んでしまいますので、夜明け前1時間ほどは月明かりの影響を受けずに良い条件で観察できます。
12月の星空
関東地方では12月はお天気が晴れの日が多く、寒い中ですが、空が澄んで星空が美しく見えます。
冬の代表的な星座のひとつおうし座にはとても明るい木星が輝いており、夜空の中にすぐにみつけることができます。
おうし座がみつかったら、周囲の星座もさがしてみましょう。
おうし座の北側には1等星カペラのあるぎょしゃ座が五角形の星の配列になってみつけやすく、一度みつけると忘れない星座となることでしょう。
ぎょしゃ座の隣にはふたご座があり、火星の赤い輝きもその付近に見られます。
おうし座の東側にはオリオン座が見られ、西側にはペルセウス座、おひつじ座それにくじら座といった秋の星座もまだ見られますので、冬の星座と共にさがしてみましょう。
12月の惑星
水星
12月6日に内合となり、25日に西方最大離角となります。下旬には明け方の東の低空に見えます。
(明るさ2.1~-0.4等級)
金星
宵の明星として、夕方の南西の空に明るく輝いています。
来年の1月10日に東方最大離角を迎えます。
(明るさ-4.2~-4.5等級)
火星
2025年1月12日に地球に最接近しますので、とても明るく輝いて見えます。
ふたご座の1等星ポルックスに近い位置に見えますが、赤く輝いていますので、すぐに見つけることができることでしょう。
(明るさ-0.5~-1.2等級)
木星
日没後、西の空では金星が明るく輝いていますが、東の空からは木星が煌々と輝いて見えます。
付近には、おうし座の1等星のアルデバランも輝いていますから、すぐに見つけることができます。(-2.7~-2.6等級)
土星
日没の南の空、みずがめ座の中で輝いています。
12月8日には月と接近します。関東地方などでは星食として、月に隠される現象が見られます。本体を取り巻く環が細く見られるようになってきました。機会を見て天体望遠鏡で確認しましょう。
(1.0~1.1等級)
12月の天文情報
(月齢は正午の値)
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
1 | 日 | 29.6 | 新月 |
2 | 月 | 0.9 | |
3 | 火 | 1.9 | 月の距離が最遠 |
4 | 水 | 2.9 | |
5 | 木 | 3.9 | 細い月と金星が接近 |
6 | 金 | 4.9 | |
7 | 土 | 5.9 | 大雪(二十四節気) |
8 | 日 | 6.9 | 月に土星が隠される(土星食) 木星が衝 月面Xが見える |
9 | 月 | 7.9 | 上弦の月 月が天の赤道を通過北半球へ |
10 | 火 | 8.9 | |
11 | 水 | 9.9 | |
12 | 木 | 10.9 | 月の距離が最近 |
13 | 金 | 11.9 | |
14 | 土 | 12.9 | ふたご座流星群が極大 プレアデス星団の食 |
15 | 日 | 13.9 | 満月(コールドムーン) 月が木星に最接近 |
16 | 月 | 14.9 | 月の赤緯が最北 |
17 | 火 | 15.9 | |
18 | 水 | 16.9 | 月と火星が最接近 |
19 | 木 | 17.9 | |
20 | 金 | 18.9 | |
21 | 土 | 19.9 | 冬至(二十四節気) |
22 | 日 | 20.9 | |
23 | 月 | 21.9 | 下弦の月 月が天の赤道を通過南半球へ |
24 | 火 | 22.9 | 月の距離が最遠 |
25 | 水 | 23.9 | おとめ座スピカ(α星)の食 水星が西方最大離角 |
26 | 木 | 24.9 | |
27 | 金 | 25.9 | |
28 | 土 | 26.9 | |
29 | 日 | 27.9 | 月が水星に最接近 |
30 | 月 | 28.9 | 月の赤緯が最南 |
31 | 火 | 0.2 | 新月 |
12月の星空案内図
南の星空
北の星空
田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では天文台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。