ちあきの星空コラム
第256回 11月の星空 (2024/11/05)
紫金山・アトラス彗星情報
今年10月に見られると本コラムでお知らせしました紫金山・アトラス彗星が夕刻の西の空に姿を現し、写真にあるように長く尾を引いた姿で見ることができました。
先月のコラムに途中で速報を入れましたが、お天気も数日に1度は晴れることから、そのチャンスをのがさず、見られた方も多かったことと思います。
10月13日の観測では、西空の中、金星と同じ高度くらいの低空で見られたのですが、その後、日々高度を上げ、次の写真にあるように10月22日には日没後1時間くらいたっても高度が30度くらいあり、大変見やすくなりました。
11月にも見られる紫金山・アトラス彗星
11月には彗星はだんだんと地球から遠ざかっていきますので、暗くなり、尾は短くなっていきます。いつごろどのあたりに見られるかを下図に表しました。
図をたよりに探すのがいいでしょう。肉眼では、都会地では2~3等星程度までしか見えず、光害の少ない郊外でも6等星が見える限界です。紫金山・アトラス彗星は、この限界の6等級程度あるいはもう少し暗い等級で見られることが予想されていますので、暗い等級まで見ることができる器具、すなわち双眼鏡か天体望遠鏡を使うといいでしょう。
なお、写真撮影では、肉眼では見えない暗い星まで写すことができますので、ぜひ、撮影にもチャレンジしましょう。ナイトモードなどの夜間用撮影モードを持ったスマホなどが最適でしょう。
11月の星空
秋の星空は、澄んだ空気と共に天が高く見える特徴がありますが、都会の空では光害の影響などにより暗い星まで見ることができませんので、明るい星どうしを結んだ特徴的な星の配列をみつけて、それがわかったら星座の全体像をみつけましょう。そうしたさがし方からひとつひとつ星座をさがしていくといいでしょう。こうした星座の「発見」が大きな楽しみになります。
また、機会があれば郊外に出かけて光害の少ないところで再度、観察することをお勧めします。
星図を頼りに星座を詳細に確認していくことは楽しみとしてとても有意義です。
秋の空では、みなみのうお座のフォーマルハウトただ一つが1等星で、それ以外の秋の星はみな2等星以下の暗い星々で構成されています。そうした中、みずがめ座には土星が輝いており、1等級の明るさで輝いていますので、これだけがとても目立ちます。ご確認ください。
11月の惑星
水星
11月16日に東方最大離角となりますので、夕方の西の空に水星を観測できるかもしれません。
金星も西の空に見えていますので、両星を一緒に1コマの写真に写しこめるかもしれませんね。
(明るさ-0.3~1.6等級)
金星
宵の明星として、ようやく見やすくなってまいりました。
紫金山・アトラス彗星の位置を確認するのにも役立ちますからぜひ最初に見つけましょう。
(明るさ-4.09~-4.2等級)
火星
冬の星座、ふたご座の中にありますが、明け方の空に赤く輝く明るい星としてみつけることができます。2025年1月の地球最接近に向けて観測チャンスが大きくなる星です。
(明るさ0.1~-0.5等級)
木星
日没後の星空で、金星と共に明るく輝いて、目立つ星として木星があります。おうし座の中にありますから1等星のアルデバランやすばる(プレアデス星団)とともに対比しながら星空を眺めて楽しみましょう。
(-2.5~-2.7等級)
土星
日没後に南の空、みずがめ座の中で輝いています。本体を取り巻く環が細く見られるようになってきました。機会を見て天体望遠鏡で確認しましょう。
(0.8~1.0等級)
11月の天文情報
(月齢は正午の値)
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
1 | 金 | 29.3 | 新月 |
2 | 土 | 0.6 | |
3 | 日 | 1.6 | 文化の日 |
4 | 月 | 2.6 | 振替休日 細い月と金星が並ぶ |
5 | 火 | 3.6 | |
6 | 水 | 4.6 | 月の赤緯が最南 |
7 | 木 | 5.6 | 立冬(二十四節気) |
8 | 金 | 6.6 | 月面Xが見える |
9 | 土 | 7.6 | 上弦の月 |
10 | 日 | 8.6 | |
11 | 月 | 9.6 | 月と土星が接近 |
12 | 火 | 10.6 | おうし座北流星群が極大 月が天の赤道を通過北半球へ |
13 | 水 | 11.6 | |
14 | 木 | 12.6 | 月の距離が最近 |
15 | 金 | 13.6 | |
16 | 土 | 14.6 | 満月(ビーバームーン) |
17 | 日 | 15.6 | 月と木星が並ぶ しし座流星群が極大 |
18 | 月 | 16.6 | 月の赤緯が最北 |
19 | 火 | 17.6 | |
20 | 水 | 18.6 | 月と火星が接近 |
21 | 木 | 19.6 | |
22 | 金 | 20.6 | 小雪(二十四節気) |
23 | 土 | 21.6 | 勤労感謝の日 |
24 | 日 | 22.6 | |
25 | 月 | 23.6 | 月が天の赤道を通過南半球へ |
26 | 火 | 24.6 | 月の距離が最遠 |
27 | 水 | 25.6 | |
28 | 木 | 26.6 | |
29 | 金 | 27.6 | |
30 | 土 | 28.6 |
11月の星空案内図
南の星空
北の星空
田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では天文台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。