つくばのこと、もっとわかれば もっとたのしい! 茨城県つくば市のケーブルテレビ局ACCSによる地域情報サイト

ちあきの星空コラム

第252回 夏の夜空に注目の星 (2024/07/01)

かんむり座T星の爆発

かんむり座T

うしかい座とヘルクレス座の間にある小さな星座「かんむり座」は、春から夏にかけて見られる形の整った星座です。星の配列の良さから一度見たら忘れられない印象的な星座ですが、このかんむり座にあるT星は、通常は10等級の暗い星で肉眼では見ることができず、天体望遠鏡を使って初めて観測できる星です。しかし、80年の周期で爆発して増光しますので、肉眼でも見えるようになるといわれています。

以前は、1946年に明るくなったといわれていて、いよいよ次の増光が期待されるときがやってまいりました。
T星の明るさは、10等級から2等級程度まで明るくなるといわれています。つまり、肉眼ではっきり見えるような明るさになるわけですから、決して見逃すわけにはいきません。

この星は明るさがなぜ大きく変化するのでしょうか。今まで見えていなかった恒星が、爆発して明るくなり、見えるようになる現象は新星の出現といいます。新星という呼び名を使いますが、決して新しい星ではないということも頭に入れておきましょう。過去に何度か増光(爆発)が確認され、また見られるこのT星は「再帰新星」と呼ばれています。ほかの呼び方もあり、「反復新星」、「回帰新星」あるいは「再発新星」などとも呼ばれています。

この現象が起きる理由ですが、T星は連星とよばれる2個の星からなる二重星で、その2星の間隔は近く、片方の星からもう片方の星にガスが流れこみ、ガスが片方の星にたまって核融合反応によって爆発的に明るくなることがあるということだと説明されています。

T星は、光害のある都会地などでも肉眼でも見える明るさなることが予想されていますので、私たちも肉眼ではっきり確認できることでしょう。もちろん、双眼鏡や天体望遠鏡を使っても、さらにはっきり見ることができるようになります。楽しみですね。

かんむり座T星   撮影:田中千秋

どうやって探すか?

かんむり座T星が爆発により肉眼等級の2等星くらいまで明るくなることが期待されていますが、都会地など光害(ひかりがい)の多いところでは、見える限界の等級が3等級(3等星)くらいまでしか見られません。そこで、星座早見盤などを使って、まず、かんむり座を見つけるところから作業がはじまります。

かんむり座がみつかったら、次にT星の位置を上の写真をたよりに探していきます。
もっとも明るくなる時期には2等級まで明るくなりますので、肉眼で簡単に見られるようになりますが、突然、明るくなる時期や、逆にじょじょに暗くなっていく様子は、肉眼だけでなく、双眼鏡などを使うとより観察しやすくなることでしょう。

みつけたら周辺の星の配列から位置を覚え、次に、翌日などに観察するとその明るさの変化も確認できます。
明るくなって、肉眼でも見られる日数は、数日程度しかないかもしれませんので、新聞やネットのニュースに注目して見逃さないようにしましょう。

天の川を見る

夏の夜空には天の川が見られ、天の川をはさんで七夕の物語に登場する織姫星(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)などが見られます。
天の川の中にも明るい1等星が見られ、頭上高く見られるはくちょう座のデネブや南の空に赤く輝くさそり座のアンタレスをみつけることができます。
天の川の正体は、私たちの銀河(天の川銀河)の中にある恒星で、太陽と同じように光輝く星の集団なのです。肉眼では雲のように見えますが、双眼鏡や天体望遠鏡を天の川の方向に向けるとそれが星でできていることがわかります。
私たちの住む地球を含む太陽系の星々もすべて天の川銀河に属する星で、宇宙全体からすると天の川銀河の星々は巨大な星の集団であり、天の川銀河をその外側から眺めると私たちがアンドロメダ銀河を見たときの姿のように渦巻き状の姿をしています。
夏休みなどの休暇を利用してぜひ、本物の天の川を体験しましょう!

天の川と流れ星:中央に雲のように見られるのが天の川。撮影中に
流れ星が写り込みました。
2024年6月8日
福島県田村市で撮影

7月の惑星

水星

7月22日に東方最大離角を迎えます。夕空の西の空に低空ですが、観察することができます。
(明るさ-0.6~0.9等級)

金星

6月5日に外合を迎え、宵の明星として夕方の西の空に見えるようになってまいります。といっても、まだ低空で、見やすくなるのは9月ごろになります。
(明るさ-3.9~-3.8等級)

火星

2025年1月に地球に接近しますので、徐々に明るくなってきます。7月15日には天皇制に接近して離角が32′となります。
(明るさ1.0~0.9等級)

木星

明け方の東の空で、最も明るく輝くのが木星です。他の惑星と共に明け方の空を楽しませてくれます。
(-1.9~-2.0等級)

土星

明け方の南の空で輝いています。みずがめ座の中にあり、深夜頃から観測可能です。
(1.1~0.9等級)

7月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
24.6月が火星に最接近
25.6
26.6明け方細い月とプレアデス星団が接近
27.6
28.6月の赤緯が最北 地球が遠日点を通過
0.2小暑(二十四節気) 新月
1.2
2.2夕方細い月と水星が並ぶ
3.2
104.2木星とアルデバランが最接近
115.2
126.2月が天の赤道を通過、南半球へ
137.2
148.2上弦の月
159.2海の日
1610.2
1711.2
1812.2
1913.2月が最南
2014.2
2115.2満月(バックムーン) 火星とプレアデス星団が最接近
2216.2大暑(二十四節気) 水星が東方最大離角
2317.2
2418.2月の距離が最近
2519.2土星食
2620.2月が天の赤道を通過、北半球へ
2721.2
2822.2下弦の月
2923.2
3024.2月とプレアデス星団が大接近 みずがめ座δ南流星群が極大
3125.2月が木星と最接近
7月の星空案内図
南の星空
背景白

背景白

背景黒

背景黒

北の星空
背景白

背景白

背景黒

背景黒

7月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。この星図では、月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ12」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では天文台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。