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ちあきの星空コラム

第244回 惑星を楽しむ (2023/11/01)

土星と木星を楽しむ

(1) 土星はみずがめ座にある

今年の秋は、天体望遠鏡で惑星を眺めるチャンスといえ、特に土星は11月の夕空の中にあるため、天体観望会などが地域で催されたときは、ぜひ参加して観望を楽しみましょう。
天体観望会では、順番に並んで、順番がくると見ることができますが、土星の本体が丸く見え、その周りに環が存在しています。
環は、氷の粒などでできているのですが、本体とともに太陽の光を受けて環も明るく見えます。
よく見ると、輪の中に隙間があるように見えて、カシニの空隙と呼ばれています。
また、土星の周囲には土星の衛星が存在し、その中でも明るいタイタンは、小型の天体望遠鏡でもよく見えます。
天体観望会に行ったら、土星の環とともにタイタンも探してみましょう。

先月も掲載しました土星の写真。環の傾き具合は、毎年変化があり、再来年には、線状になってしまいます。この写真では輪の中に見られる「カシニの空隙」がはっきり見られます。この写真は、先月と同様友人の川端孝幸氏が撮影したものです。

(2) 木星はおひつじ座

木星は、おひつじ座の中にあり、他の星々よりもとても明るく、煌々と輝いているという形容が似合っているすごい輝きですので、誰でもすぐにみつけることができます。
木星を天体望遠鏡で見ると、本体の形状はまん丸ではなくて、少し押しつぶされたような楕円型に見えます。木星は、本体が私たちの住む地球とちがってガスでできていますので、表面はガスの模様が見えています。
また、木星にも衛星があり、小型の天体望遠鏡でも4個のガリレオ衛星と呼ばれるガリレオ・ガリレイがみつけた衛星が見られ、名前は、イオ、カリスト、エウロパそれにガニメデと名付けられています。これらの衛星の木星の周りを回る公転周期は早く、天体望遠鏡でしばらく観察し、スケッチや写真で記録すれば、公転により移動していることが確かめられます。
ぜひ、天体観望会などでじっさいの木星を観察しましょう。


木星の表面模様は、しま模様として見られますが、その中に目玉のような形をした大赤斑が見られます。すでに200年以上その姿を見せていると言われる大赤斑は、常に変化し、観測を継続する楽しみを持っています。この写真は、先月と同様友人の川端孝幸氏が撮影したものです。

(3) 天体望遠鏡を購入する

今年の秋に見頃を迎えた土星や木星を天体望遠鏡を使った天体観望会などで観望し、その神秘的な姿を見ることができ、その感動から自分でも天体望遠鏡がほしいと思う方もいらっしゃることでしょう。
私もよく天体観望会の講師をつとめるときに「天体望遠鏡っていくらくらいするのですか」とか「どのような天体望遠鏡を買えばいいのでしょうか」といった相談を受けます。

そうした質問にはその場でお答えしますが、使用する方が小学生ですと、知識と探究心は旺盛ですが、天体望遠鏡の移動や操作性を考慮すると、あまり大きくなく、望遠鏡を星に向ける架台の部分が操作が簡単な経緯台式の口径8センチメートルクラスの天体望遠鏡をおすすめしています。
中学生以上になると体力や知識量がさらに大きくなってきますので、架台部分が赤道儀(せきどうぎ)式のやや高価な天体望遠鏡をおすすめします。この場合も口径は8センチメートル以上の機種を選ぶようにアドバイスをします。
低性能な安物を買うと、すぐに性能に物足りなくなって天文への情熱も失う可能性がありますので、一流のメーカー品をおすすめしています。
じっさいの購入では、衝動買いせず、天文雑誌や天体望遠鏡の書籍などで天体望遠鏡の知識を身につけ、また、ネットなどで販売されている機種の評判などを確かめたりしてから機種選択をしましょう。時間をかけ、悔いのないように確かな製品を購入してください。
光学系は屈折式と反射式がありますが、取り扱いやすさでは屈折式をおすすめします。さらに、屈折式では、対物レンズの口径が最低でも8センチメートル以上の口径を持つ天体望遠鏡を選びましょう。反射式の場合は口径13センチメートル以上を選択しましょう。
望遠鏡の筒(鏡筒部)を支える架台には経緯台式と赤道儀式がありますが、先に述べていますように小学生では望遠鏡を縦、横に動かすことのできる経緯台式が軽量で扱いやすいといえます。
中学生から大人クラスでも経緯台式の架台は使用できますが、たとえば天体写真撮影なども検討されているのであれば、赤道儀式をおすすめします。赤道儀式は天体の運行すなわち日周運動により移動する星を追尾しやすい構造になっていますので、観測や写真撮影に便利です。ただし、赤道儀式は少々重い機材となります。
三脚は、どの機種でもアルミ伸縮式がセットで付属しています。
天体望遠鏡は、購入出費は安くありませんが、一生使えるものと思えばそんなに高い買い物でもありませんから、長く、天体の研究などで使いたいという場合は赤道儀式の高級品をおすすめします。
「ちょっと見てみたいだけ」という場合は、天体観望会などに出かけて天体望遠鏡で天体を眺めましょう。わざわざ購入する必要はありませんね。

秋の星座をさがしてみよう!

夕空には西の空に夏の星座が残って見えていますが、南の空から東の空に見られる秋の星座をさがしてみましょう。
星座早見などを利用して、秋の四辺形から探していきましょう。
秋の四辺形がみつかったら、その四辺形を含むペガスス座を最初に確認しましょう。
次に、秋の四辺形を基準にして、周囲にある星座を探していきます。
四辺形の一角から伸びたアンドロメダ座の星の配列をさがしましょう。
南の空にはみなみのうお座やみずがめ座がみつかります。
東の空にはおひつじ座やくじら座などをみつけることができます。また、北の空にはカシオペヤ座やペルセウス座などをみつけることができるでしょう。

秋の星座カシオペヤ座(線で結んだWの形状)とその右側にペルセウス座の二重星団が見られます。天の川の中にありますから比較的星数が多く、双眼鏡で眺めても楽しい星の領域です。

ペルセウス座の中にある二重星団、星座の位置がわかるようになるとこうした天体の位置がわかるようになります。二重星団を天体望遠鏡で見ると宝石箱のような輝きを実感できます

惑星情報

今月も先月同様に土星と木星が見頃です。
先月も述べましたが、惑星は、恒星のようにまたたかず、光害や月明かりの影響も受けずに見ることができます。

水星

今月の水星は、太陽に近い方向に見えていますので、観察に適しません。

金星

10月24日に西方最大離角を迎えたばかりで、明け方の東の空高く-(マイナス)4.3等級程度の輝きで明るく見えています。早起きをしてぜひ、見ましょう。

火星

火星は、11月18日に太陽の向こう側の方向に見えていて、合(ごう)を迎えます。したがって、観察には不適です。

木星

木星は、空高く煌煌と輝き、深夜の満点の星空の中で、どの星よりも明るく見えます。星座ではおひつじ座の中に位置し、-2.8等級の明るさです。

土星

土星は、観察の好機が続いています。
南西の空、みずがめ座の中にあって周囲の星々よりも明るく見えますので、すぐにみつけることができます。明るさは、およそ0.6等級と明るく、天体観察会など、天体望遠鏡を使って見るチャンスがあれば、環を持つその姿をぜひ、ご自身の眼で確かめましょう。

11月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
17.4
18.4月の赤緯が最北
19.4文化の日 木星が衝
20.4
21.4下弦の月
22.4
23.4月の距離が最遠
24.4立冬(二十四節気)
25.4細い月と金星が並ぶ りゅう座流星群が極大
1026.4
1127.4レモン彗星が地球に最接近
1228.4
1329.4新月 おうし座北流星群が極大
140.7
151.7
162.7月の赤緯が最南
173.7
184.7しし座流星群が極大
195.7
206.7上弦の月 月面Xが見られる
217.7月が土星に最接近
228.7小雪(二十四節気) 月の距離が最近
239.7勤労感謝の日 月が天の赤道を通過、北半球へ
2410.7
2511.7月と木星が大接近
26 12.7
27 13.7満月
28 14.7土星が東矩
2915.7月の赤緯が最北
30 16.7金星とおとめ座スピカが再接近
11月の星空案内図
南の星空

背景黒

背景白

北の星空

背景黒

背景白

11月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。この星図では、月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ12」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。