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ちあきの星空コラム

第240回 夏の星座をみつける (2023/07/03)

梅雨明けと同時に夏の星空がやってくる

7月に入り、梅雨が明けると夜空は夏の星座でいっぱいです。
南の空にはさそり座やてんびん座、へびつかい座などが見られ、東の空からは夏の大三角が昇ってきます。夏の大三角は、こと座のベガ、わし座のアルタイルそしてはくちょう座のデネブの3星を結ぶとできる大きな三角形で、夏の星座の中でもひときわめだつ明るさを持つ星々で構成されていますから、みつけるのは容易で、この大三角をみつけることが夏の星座をさがす原点ともいえます。
星空の中で、夏の大三角がわかるようになったら、関係する星座の形を確認しましょう。
こと座は、ベガのほかに平行四辺形のような星の配列をさがしましょう。
わし座は、アルタイルの左右にある星が、アルタイルを含めていわゆる「天秤棒」(てんびんぼう、てんびん座ではありません)のような配列をかたちづくり、同様な星の配列は、ほかにさそり座のアンタレスにしかありませんので、その特徴から忘れられない形状といえます。その天秤棒を中心に星図や星座早見を利用してわし座の星々をさがしましょう。
デネブは、はくちょう座の尻尾に位置し、はくちょう座全体が天の川の星が多いところにあります。星座の形状は、十字架のパターンのような星の配列をしており、南の空に見られるみなみじゅうじ座が「南十字」と呼ばれるように、はくちょう座は「北十字」と呼ばれることがあります。
なお、こと座のベガは、七夕(たなばた)でいう織姫星(織女星)、わし座のアルタイルは彦星(牽牛星)です。

夏の大三角:昨年7月のコラムでも掲載した写真ですが、実際に星空の中で夏の大三角をさがすときに星図代わりにこの写真を星空にかざして夏の大三角をさがすこともできます

七夕を祝う

7月7日には七夕がやってまいります。ふるくから七夕伝説に基づき笹の葉に願いごとを書いた短冊をつるして軒などに飾り、願いごとがかなうように星にお祈りする風習ですが、ちょうど梅雨時にあたり、じっさいの星が見られない年が多いことが残念です。
そこで、全国各地の七夕まつりは、月遅れの8月7日前後の日程でとり行われていることが多いようです。
また、そもそも七夕伝説が生まれた昔の時代には、暦(こよみ)は旧暦(太陰暦)を採用していたため、現在の新暦(太陽暦)に基づく7月7日ではありませんでした。
今年の旧暦七夕(7月7日)は、8月22日に相当します。この8月22日を「伝統的七夕」と呼んでおまつりする所も次第に増えてまいりました。
現在の7月7日が毎年梅雨の時期なのに対して、旧暦の7月7日の頃であれば、現在のおおよそ8月に相当してお天気が良い可能性が高いため、じっさいに七夕の星(織り姫星と彦星)を見ることができるチャンスが多いといえます。こうした背景から伝統的七夕の日を七夕のおまつり日にする人々が増えていることに納得がいきます。
伝統的七夕を考えるとき、歴の仕組みや歴史を知るきっかけも一緒に学べますね。ぜひ、あなたも調べてみませんか。

惑星情報

金星が7月7日に最大光度となり、夕方の西の空に明るく輝いています。
金星以外の星も含めまして、各惑星の情報をお届けします。

水星

水星は、7月1日に外合を迎えますので、この頃は太陽の向こう側に位置し、観測ができません。
下旬には日没後の西の低空に見えるようになり、8月10日の東方最大離角の頃が最も観測好機となります。

金星

金星は、宵の明星として夕暮れの頃から西の空で煌煌とかがやいています。
最も明るく輝く最大光輝は、7月7日に迎え、この日は光度が-(マイナス)4.7等級となりますので、他の星とは明るさで圧倒的な差があり、UFOと見間違う人も現れるほどです。
最大光度を過ぎた後の金星は、日々、高度が下がっていくのを観察できます。
8月13日には太陽の方向に位置する「内合」(ないごう)となり、見ることができません。
なお、最大光度を迎えた金星は、天体望遠鏡を使ってみると三日月状の細い姿として見られます。機会があれば確認してみましょう。

火星

火星は、夕空の中、西の低空に見られ、7月前半は金星と比較的近い位置にあります。星座ではしし座の中に見られますので、しし座の1等星レグルスとの比較もできます。火星は地球から遠ざかった位置にありますから、明るさも2等級まで暗くなっています。
なお、昨年のように火星が接近するのは、次は2025年2月となります。

木星

木星は、おひつじ座の中に-2等級の明るい星として輝いています。他の星々よりも圧倒的に明るいので、みつけるのは簡単です。ただし、深夜に東の空から昇ってきますので、明け方の観察に適しているといえます。
天体望遠鏡を使えば、本体の縞模様のほか、本体の周囲を公転する4個のガリレオ衛星を観察することもできます。

土星

土星の環のある不思議な形は、天体望遠鏡を持っていれば、必ず観察したいものといえますが、
今年の土星はみずがめ座の中に輝いており、秋の星座の中にありますので、7月に見ようとすると深夜から明け方にかけて観察することとなります。
観察の光輝となる衝は、8月27日ですので、9月頃からは、夕方の東の空から昇ってくる姿を見ることができるようになります。この頃には一晩中その姿を見ることができるようになります。

7月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
12.9金星と火星が最接近
13.9
14.9満月 月の赤緯が最南近
15.9
16.9月の距離が最近
17.9
18.9小暑(二十四節気) 七夕 月が土星に再接近
19.9
20.9
1021.9下弦の月 金星が最大光輝
1122.9火星とレグルスが最接近(夕空)
1223.9月と木星が大接近
1324.9
1425.9月とプレアデス星団が並ぶ
1526.9水星とプレセーペ星団が接近
1627.9月の赤緯が最北
1728.9海の日
180.4新月
191.4細い月と水星が接近
202.4細い月と金星が並ぶ 月の距離が最遠
213.4細い月と火星が接近
224.4
235.4大暑(二十四節気)
246.4月が天の赤道を通過,南半球へ
257.4
26 8.4上弦の月
27 9.4水星と金星が最接近
28 10.4
2911.4
3012.4月の赤緯が最南
3113.4みずがめ座δ流星群が極大
7月の星空案内図
南の星空

背景黒

背景白

北の星空

背景黒

背景白

7月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ12」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。