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ちあきの星空コラム

第239回 惑星の見え方 (2023/06/01)

夏至がやってくる

6月というと梅雨のいやなイメージがありますが、じっさいの6月は毎日、雨がふるといったことでもなく、特に月の前半は晴れる日も多く、夕空には春の星座、深夜には夏の星座を見ることができます。
6月21日には、夏至(げし)もやってまいります。この頃、お天気が良ければ、昼の長さが実感できて、夜の暗さがなかなかやって来ませんし、明るい夕方の時間を長く楽しむことができます。
さらに、西の空には宵の明星(よいのみょうじょう)と呼ばれる金星が空高く見え、その輝きを誇示するように煌煌(こうこう)と輝いています。金星は6月4日に東方最大離角を迎え、太陽との角距離が最大となりますので、夜遅くまで西空にその星の輝きを楽しむことができます。東方最大離角の日には、金星が西の地平線に沈むまでの時間が長く、長時間金星の姿を見ることができます。
東京では午後10時11分頃に西の空から地平線に沈んでいきます。ぜひ確認してみましょう。
金星はさらに、7月7日には地球から見た明るさが最大光度になり、他の星を圧倒する力強い輝きを見ることができます。

これからの惑星の見え方など

夕空に金星が明るく見えていますね。
金星だけでなく他の惑星も、どの位置にどのように見えるのか、今後の変化などを含めて今月はお知らせします。
なお、太陽系の惑星は、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星及び海王星と8個ありますが、肉眼で見ることができない天王星及び海王星並びに私たちの地球は、省略します。

惑星を天体観望会(星空観察会)風に合成してみました。

水星

水星は、太陽に最も近い位置を公転する惑星ですから、地球から見ると太陽からあまり離れた位置には見ることができません。
つまり、夕方か、明け方にしか見ることができないわけです。
太陽の東側に水星が位置しているときは、太陽が沈んだ直後に西の夕空に見ることができ、逆に太陽の西側に位置しているときは、明け方の東の空に見ることができます。
水星は公転周期が約0.241年で、地球、太陽を含めた会合の周期が、約116日なので、地球から見ると1年のうちに何度も夕空に見えたり、明けの空に見えたりすることになります。
今年の6月以降の水星は、年内には次のように観察できます。
6月には、5月29日に西方最大離角を迎えますので、6月上旬には明け方の東の空に見ることができます。
7月には7月1日に外合を迎えるため、観測ができませんが、下旬には日没後の西の低空に見えるようになり、8月10日の東方最大離角の頃が最も観測好機となります。
9月には9月22日に西方最大離角となり、東の明けの空に見ることができます。
10月は20日に外合となり、観測に適しません。
11月は低空にしか見られず、観測不適といえます。
12月には、4日に東方最大離角を迎えますが、天の惑星の通り道である黄道の位置が低空にあるため、水星の高度が低く、観測に適しているとはいえません。
以上の情報を参考にして、ぜひ、本物の水星を探してみましょう。

富士山と水星(茨城県龍ケ崎市内竜の子山で撮影

金星

金星は、6月4日に東方最大離角を迎えます。すなわち、もっとも高度が高く見えるようになる日を6月4日に迎えるということになります。夕方の西空の中でとても見やすく、宵の明星(よいのみょうじょう)と呼ばれ、誰もが夕方の西の空にみつけることができることでしょう。
その後は、日々、高度が下がっていくのですが、最も明るく輝く最大光輝は、7月7日に迎えます。
この日は、光度が-(マイナス)4.7等級となり、1等星の約200倍の明るさを誇る輝きとなります。
東方最大離角を過ぎますと、日々、高度が下がっていくのを実感することができますが、8月上旬には太陽に近い位置になって見えにくくなります。8月13日には太陽の方向に位置する「内合」(ないごう)となります。内合のときは、見ることができませんが、その後は明けの明星として、夜明け前の東の空で明るく輝くようになります。
じっさいに夜明けの直前に東の空に見られるようになるのは8月の終わり頃からで、9月19日には最大光度-4.8等級となり、明けの空を飾る明けの明星となります。
その後、西方最大離角を迎えるのは10月24日で、年内は明けの明星として観察する好機が続きます。
なお、夕空の最大光輝から内合少し前までの期間と内合の後、明けの明星としての最大高度となるまでは金星の姿は、天体望遠鏡を使ってみると三日月状の細い姿となり、とても優雅な姿に見えます。

火星

火星は、昨年の12月1日に地球に最接近して大きく明るく見ることができましたが、今年に入ってからはだんだんと地球から遠ざかり、今月には天体望遠鏡で大きく拡大して見る対象とはならないくらいに遠ざかって小さく見えるようになりました。
とはいっても、肉眼で星座の中の位置を確認することは容易で、2等級程度の明るさで位置を確認できます。
6月にはかに座の中に位置し、7月にはしし座、9月にはおとめ座の中を移動していきます。さらに11月にはてんびん座、12月にはさそり座まで移動します。
ずっと火星の星座との位置関係を肉眼で確かめたいところではありますが、残念ながら太陽の方角と重なり、見ることができない時期もあります。今年は火星観測はお休みした方が良さそうです。

木星

木星は、太陽系で最も大きい惑星です。
地球から見て太陽と反対方向に位置する衝(しょう)を11月3日に迎えますが、衝を迎える前は夕方の空では見ることができません。
明け方の空ではおひつじ座の中に-2等級の明るい星としてみつけることができます。
夕空での観測好機は衝を迎えた以降、すなわち11月以降となります。
天体望遠鏡で見ると、表面に縞模様がみられますが、自転速度が速いために、何時間かして再び観察するとずいぶん位置が移動していつ様子を確認できます。また、日々、観測を重ねますと、縞模様の形状がわずかずつではありますが、変化も確認することができることでしょう。
さらに、周囲を公転する4個のガリレオ衛星を観察することができます。
衛星は動きが速いので、毎日の観察でその位置が変化していることがわかります。

土星

土星の姿は、天体望遠鏡で見ると環のある不思議な形で確認でき、とても神秘的なその姿に感動を覚えます。
今年の土星はみずがめ座の中に輝いており、衝は、8月27日です。
衝を過ぎますと、夕方の東の空から昇ってくる姿を見ることができます。さらにこの頃は一晩中その姿を見ることができます。
じっさいには日没後、2時間程度過ぎて、夜空の星が見えるようになる頃には高度も高くなり、はっきりと土星の輝きを見ることができます。
8月後半以降に開催される天体観望会では、土星を見ることができるチャンスがやってきます。楽しみにお待ちください。

6月の天文情報

(月齢は正午の値)

 

曜日月齢天文現象など
10.9土星が西矩
11.9
12.9火星とプレセペ星団が最接近
13.9満月 金星が東方最大離角
14.9
15.9芒種(二十四節気)
16.9月の距離が最近
17.9
18.9
1019.9月と土星が接近
1120.9入梅 下弦の月
1221.9月が天の赤道を通過 北半球へ
1322.9
1423.9金星とプレセ星団が最接近
1524.9
1625.9細い月とプレアデス星団が接近
1726.9細い月と水星が接近
1827.9新月
1928.9月の赤緯が最北
200.5
211.5夏至(二十四節気) 細い月とプレセペ星団が接近
222.5細い月と金星、火星が接近
233.5月の距離が最遠
244.5
255.5
26 6.5上弦の月 月が天の赤道を通過南半球へ
27 7.5
28 8.5
299.5
3010.5
6月の星空案内図
南の星空

背景黒

背景白

北の星空

 

背景黒

背景白

6月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ12」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。