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ちあきの星空コラム

第213回 遠ざかる火星の移動 (2021/04/01)

火星の移動に注目

火星は地球のお隣にある惑星ですから地球から見た時の動きも大きく、日々、星座間を移動していく様子が観察できます。
現在、地球から遠ざかりありますが、見かけ上、3月にはすばるに接近し、さらに3月19日には月にも接近しました。火星は、今後も星座間を移動していく間に星雲、星団や月と接近し合うことがありますので目が離せない天体です。
3月のすばるへの接近の様子を友人が撮影し、提供してくださいましたので、ご披露します。ご覧ください。

すばると火星の接近 2021年3月3日千葉県内にて 首藤謙一氏撮影

火星と月が接近

火星は、4月17日に月と接近します。それも大接近です。
この日、夕空に細い月と火星の姿が見られますが、時刻の経過とともに月は西の地平線に沈んでいきますので、沈む前に観察しましょう。地平線に近づくにつれて、月は自国の経過とともに火星にさらに近づく様子が観察できます。この様子は肉眼で十分観察できますが、双眼鏡ではよりはっきりと見ることができます。もちろん天体望遠鏡を使えば、より詳しく観察できますし、スマートフォンなどで撮影することもできます。

4月17日月と火星の接近の様子(シミュレーション図)

月面Xが見られる

今年の2月19日に月面表面の地形から月面Xが浮き上がるようにはっきり見られました。
月の表面は、太陽の光が当たっている部分はとても明るく輝いていて、逆に影になっている部分は暗く、黒くしか見えません。
ちょうどその明暗の境目のところを見ると、月面の地形によって、さまざまな形が浮かび上がっているように見られ、その中に太陽の光の加減から、アルファベットのXに見える形状があるのです。
Xのかたちは、今度は4月19日に見られ、しかも、XのほかにL、O、V、Eなども見ることができます。
2月19日に見られた月面Xと月面LOVEを写真に撮りましたので、ご覧ください。
観察に適した時間は、20時過ぎころから22時ころまでとなりますが、月の高度が高いうちの8時半ごろに観察しましょう。

月面の地形が太陽に照らされることによって、様々な形が見られますが、クレータを照らす太陽の光で「X」の文字が浮き上がるように見られる月面Xは、天文ファンには大人気です。

月面Xが見られる頃に 月面LOVEや月面人なども見られます。

4月の惑星

宵の空では、火星がおうし座の中で輝いているのが見られますが、木星、土星、金星そして水星は見られません。
水星や金星は地球よりも太陽に近い位置を公転する惑星なので、太陽の方向に近い位置に見えることが多く、見える時も明け方または夕方の空にしか見ることができません。今月は太陽の方向に位置して、残念ながら見ることができません。
木星、土星及び火星は、地球よりも外側を公転する惑星なので、深夜に見られることもありますが、火星は夕方の空に、木星と土星は明け方の空に見ることができます。
また、天王星と海王星は肉眼では見えない暗い星なので、このコラムでは原則、解説はしていません。
それぞれの惑星の見え方などを次にご案内します。

水星

4月15日には太陽の方向に位置する外合となり、見ることができません。

金星

3月26日に外合となった直後です。これから先、宵の明星(よいのみょうじょう)として、西の夕空に輝くようになるのですが、4月、5月はまだ太陽に近い方向に位置しており、6月頃から見やすくなることでしょう。

火星

おうし座の中にあり、明るさは1.3~1.5等級で輝いていますので、みつけやすく、7月末ごろまで夕空の中に見ることができます。
8月には太陽の方向に見えるようになるので、観測できなくなります。

木星

明け方の南東の空に-1.9~-2.1等級の明るさで輝いています。
位置はやぎ座にあり、明け方の空にとても輝いて見えます。土星との位置関係は大接近した昨年の12月に比べると、大きく離れてしまいました。

土星

明け方の南東の空に0.8~0.7等級の明るさで輝いています。木星と同じやぎ座の中にあり、すぐにみつけることができるでしょう。

4月の星空

4月の星空は、全天が春の星座でいっぱいです。北の空には、おおぐま座やこぐま座、頭上高くしし座、南の空にはうみへび座、からす座そしておとめ座などを見ることができます。東の空にはうしかい座が昇ってきます。
しし座の2等星デネボラとおとめ座の1等星スピカ、それにうしかい座の1等星アルクトゥールスを結んでできる三角形を春の大三角と呼んでいます。春の大三角をさがして、その形が正三角形に近いことを実感しましょう。

4月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
18.7
19.7
20.7へびつかい座θ星(3.3等星)の食
21.7清明(二十四節気) 下弦の月 月の赤緯が最南
22.7
23.7木星の衛星エウロパがガニメデを隠す  月が土星に最接近
24.7月が木星に最接近
25.7
26.7
1027.7
1128.7月が天の赤道を通過、北半球へ  月が水星に最接近
120.0新月 火星とおうし座β星エルナト(1.7等星)が最接近
131.0
142.0木星の衛星ガニメデがカリストを隠す
153.0月の距離が最遠
164.0木星の衛星ガニメデがイオを隠す
175.0月と火星が接近
186.0
197.0月の赤緯が最北 月面Xが見える
208.0穀雨(二十四節気) 上弦の月
219.0
2210.022時こと座流星群が極大
2311.0
2412.0
2513.0月が天の赤道を通過、南半球へ
2614.0
2715.0満月(ピンクムーン)
2816.0月の距離が最近
2917.0昭和の日
3018.0
4月の星図
南の星空

4月の南の星図(背景白)

4月の南の星図(背景黒)

北の星空

4月の北の星図(背景白)

4月の北の星図(背景黒)

4月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の範囲によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ11」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。