ちあきの星空コラム
第192回 今年の夏は木星と土星 (2019/07/02)
木星と土星が見ごろ
太陽系の惑星のうち、1番大きい木星と2番目に大きい土星が今年の夏に見られます。
木星はさそり座の近くのへびつかい座の中に見られ、土星はいて座の中に見られますが、いずれもとても明るく輝いていて、付近に見られる星座をかたちづくるどの恒星よりも明るく見られますので、肉眼でも簡単にみつけることができます。
木星の付近にはさそり座の1等星アンタレスが赤い光で輝いていますので、これが目印となりますが、木星の方が明るいため、アンタレスをみつけるまでもなく、だれでもすぐにみつけることができるでしょう。
土星はいて座の中にあり、特にその形状から南斗六星と呼ばれている付近に位置しており、土星そのものが0.1等星の明るさを持っていることからやはり目立ち、みつけやすいといえます。
特に、夜22時を過ぎてから南の空を望むと、ふたつの明るい星が木星と土星なので、簡単にみつかります。
天体望遠鏡で見ると、写真にあるように木星の表面には縞模様が見られ、よく見るとその縞模様はまっすぐな筋ではなく、波がうねっているような不思議な形状をしています。また、木星の周囲を見ますと木星の衛星が4個見えます。これらは、ガリレオ・ガリレイが発見した衛星なので、ガリレオ衛星と呼ばれています。
土星には環が見られますので、とても見栄えが良く、誰でも感動すること間違いなしです。
天体望遠鏡を持っていない方も、各地で行われる天体観望会などに参加してぜひ、天体望遠鏡で迫力ある姿を観察しましょう。
7月だけでなく、8月になっても継続してこの二つの惑星は見られますので、ぜひ、夏休みの計画の中に入れて、木星と土星の観望を楽しみましょう。
7月の惑星の位置と見え方など
7月に入るといよいよ木星と土星の観測シーズンといえます。
そのほかの惑星は観測がしにくい対象もありますが、それぞれの星座の中の位置や見え方などを理解しておきましょう。
水星
水星は、かに座に位置しており、7月上旬には夕空の西の地平線近くに見ることができます。しかし、中旬には見にくくなり、下旬には全く観測できなくなってしまいます。
金星
観測には適しませんが、もし、金星を見ようとすれば、明け方の東の空の地平線近くにみつけることできるでしょう。ふたご座に位置し、上旬よりも下旬の方がよりみつけにくくなります。
火星
火星は夕空の西の空に見られ、星座でいえば、かに座の中にあります。
昨年と違い、地球からの距離も遠く、天体望遠鏡で見ても表面模様まで確認することはむずかしいでしょう。
木星
6月11日に衝(しょう)を迎えた木星は、観測に最適の時期といえます。
本体の縞模様も変化があり、特に大赤斑のまわりの模様の変化はスケッチまたは写真に撮影して、変化していく様子をとらえましょう。
位置はさそり座の近くのへびつかい座の中にあり、明るさは-2.5等級でとても明るく輝いています。
土星
土星は7月10日に衝となり、観測の好機です。いて座の中にあり、明るさは0.1等級で、環の傾きも大きく、天体望遠鏡を持っていたら自分だけでなく、家族や友人などにもその姿を見せてあげましょう。
7月の星空
7月の星空は夏の星座でいっぱいです。
光害の少ない地域では天の川が見られ、天の川の南の地平線近くにはさそり座やてんびん座、そしていて座などが見られます。
南から上方に伸びる天の川は天の高い位置を通過して北の方まで達しています。天の川の中には、七夕伝説の織姫星(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)さらにはくちょう座のデネブなどの1等星が見られ、にぎやかな空を演出してくれます。
街中にあって光害(ひかりがい)があり、天の川が見えにくいところでも七夕の星のベガやアルタイルそれにデネブを結んで構成される夏の大三角を観察しましょう。
7月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 月 | 27.7 | |
2 | 火 | 28.7 | 月が金星に最接近 |
3 | 水 | 0.3 | 新月 月の赤緯が最北 皆既日食(チリ、アルゼンチン) |
4 | 木 | 1.3 | 月が火星に最接近 |
5 | 金 | 2.3 | 月の距離が最近 |
6 | 土 | 3.3 | |
7 | 日 | 4.3 | 小暑(二十四節気) |
8 | 月 | 5.3 | |
9 | 火 | 6.3 | 上弦の月 月が天の赤道儀を通過(南半球へ) |
10 | 水 | 7.3 | 土星が衝 |
11 | 木 | 8.3 | |
12 | 金 | 9.3 | |
13 | 土 | 10.3 | |
14 | 日 | 11.3 | 月が木星に最接近 |
15 | 月 | 12.3 | 海の日 |
16 | 火 | 13.3 | 月が土星に接近 月の赤緯が最南 |
17 | 水 | 14.3 | 満月 部分月食(西日本) |
18 | 木 | 15.3 | |
19 | 金 | 16.3 | |
20 | 土 | 17.3 | 夏の土用 |
21 | 日 | 18.3 | |
22 | 月 | 19.3 | |
23 | 火 | 20.3 | 大暑(二十四節気) 月が天の赤道儀を通過(北半球へ) |
24 | 水 | 21.3 | |
25 | 木 | 22.3 | 下弦の月 |
26 | 金 | 23.3 | |
27 | 土 | 24.3 | |
28 | 日 | 25.3 | ヒヤデス星団食 |
29 | 月 | 26.3 | |
30 | 火 | 27.3 | 月の赤緯が最北 |
31 | 水 | 28.3 |
7月の星図
南の星空
北の星空
田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。