ちあきの星空コラム
第117回 春の空にパンスターズ彗星 (2013/04/01)
4月の彗星の見え方
パンスターズ彗星は、3月10日頃から日本でも見られるようになってきましたが、予想よりも光度が暗く、明るさが4等星くらいの尾を引いた姿で日没後の夕空に見られました。
私も3月16日土曜日に千葉県鴨川市内で初めて見ることができました。
彗星は3月10日に太陽に最も近づいた後も位置が太陽に近い方向に見えていたため、日没後のわずかな時間しか見ることができませんでしたが、4月に入ってからは見える条件が変わり、明け方の東天で見ることができます。
早起きをする必要がありますが、夕空に比べて明け方の空の方がすっきり澄んで見られることも多く、彗星そのものは暗くなってきたものの、口径50~80ミリくらいの比較的大きな双眼鏡を三脚に取り付けて見れば探しやすくなります。
もちろん、天体望遠鏡を使って見ればもっと良く見えるようになります。なるべく低倍率(20~30倍程度)にして東の空の中に浮かぶように見える彗星を探しましょう。下図を参照して探せば比較的早くみつけることができることでしょう。
星座の中では彗星は、4月上旬にはアンドロメダ座付近に見られます。
4月20日ころにはカシオペヤ座を通り、5月に入るころにはケフェウス座に到達します。その後、下図に示すように5月末にはこぐま座まで到達しますが、こぐま座のポラリス(北極星)は天の北極のある位置ですからこの付近に位置する時期には一晩中、パンスターズ彗星を見ることができるようになります。
私たちは郊外地の光害(ひかりがい=まち明りなどによって星のひかりが見えにくくなる)のないところでは肉眼で6等星の星まで確認できます。
しかし、彗星はもう少し暗い等級まで落ち込むことが予想され、比較的大きな双眼鏡か、天体望遠鏡を使って、光害の影響の少ない郊外地などで探すのが確実に見るための方法となることでしょう。
彗星を写真に撮る
先月のコラムでもふれましたが、パンスターズ彗星をみつけることができたら次はカメラで撮影をしましょう。
最近のデジタルカメラは高性能になって、暗い対象でもよく写るようになってきているため、肉眼でぎりぎり見られるか、あるいはみつけられないような暗い星までをも簡単に写すことができるようになっているのです。
したがって、彗星のある方角へカメラを向けることができれば、あとはピントは∞(無限大)、シャッタースピードは数秒間露光(露出)して写してみましょう。
絞りの値は、そのレンズの最も明るいFナンバー(開放F値といいます)に合わせ、三脚に固定して撮影しましょう。
カメラの種類は、1眼レフカメラやミラーレス一眼などが向いています。
コンパクトデジタルカメラでも撮影が可能な機種もありますので、試しに夜空を写して星空を撮影できるかどうか事前に試写してみましょう。
なお、露出が1~数秒かかる撮影になりますから、シャッターブレを防ぐために三脚とリモートレリーズを使用しましょう。
4月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 月 | 20.3 | 月の赤緯が最南 |
2 | 火 | 21.3 | |
3 | 水 | 22.3 | 下弦の月 |
4 | 木 | 23.3 | |
5 | 金 | 24.3 | 清明(二十四節気) パンスターズ彗星とM31が接近 |
6 | 土 | 25.3 | |
7 | 日 | 26.3 | |
8 | 月 | 27.3 | 月が天の赤道を通過(北半球へ) |
9 | 火 | 28.3 | |
10 | 水 | 29.3 | 新月 |
11 | 木 | 0.7 | |
12 | 金 | 1.7 | |
13 | 土 | 2.7 | |
14 | 日 | 3.7 | |
15 | 月 | 4.7 | 月の赤緯が最北 |
16 | 火 | 5.7 | 月の距離が最遠 |
17 | 水 | 6.7 | |
18 | 木 | 7.7 | 上弦の月 |
19 | 金 | 8.7 | |
20 | 土 | 9.7 | 穀雨(二十四節気) |
21 | 日 | 10.7 | |
22 | 月 | 11.7 | 4月こと座流星群が極大 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
23 | 火 | 12.7 | |
24 | 水 | 13.7 | |
25 | 木 | 14.7 | |
26 | 金 | 15.7 | 満月 部分月食 |
27 | 土 | 16.7 | |
28 | 日 | 17.7 | 月の距離が最近 |
29 | 月 | 18.7 | 昭和の日 土星が衝 月の赤緯が最南 |
30 | 火 | 19.7 |
4月の星空
桜も散って新緑の季節を迎える4月は、空が霞むことが多く、低空の星空が見えにくくなってまいります。
すっかり春の星座に代わった夜空で、星座を確認しましょう。
天頂付近のしし座やかに座それにおおぐま座などをみつけたら、次はおおぐまの尻尾から春の大曲線を伝ってうしかい座アルクトゥールスそしておとめ座スピカへとたどりましょう。
南の空には大きく長いうみへび座が横たわり、2等星アルファルドが輝いています。うみへびにへばりつくようにコップ座やからす座もみつけましょう。
このコラムの星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ9」を使用しています。
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住