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ちあきの星空コラム

第116回 パンスターズ彗星がやってくる (2013/03/01)

見られるか?パンスターズ彗星

1996年に見られた百武彗星

1996年に見られた百武彗星

3月10日には期待のパンスターズ彗星が、近日点(太陽に最も近づく位置)を通過し、日没直後に大きく明るく輝くのではないかと期待されます。
以前には、百武彗星やヘール・ボップ彗星が肉眼で見えるほど明るく輝きましたが、同様に肉眼で見られればいいなと思っているところです。
予報では3月中旬ころで2~3等級の明るさで見られるだろうといわれています。
見られる位置は、下図に示しますが、日没後30分たった時点でも高度角が約10度しかなく、しかも空はまだ明るさの残ったままですから、場合によっては、双眼鏡などを使って探したほうがいいかと思います。

3月13日ころは付近に細い姿の月も見られ、きっとすてきな光景になることでしょう。
なお、時間がたつにつれて徐々に高度角が低くなり、地平線に沈んでしまいますのでゆっくり観測はできません。時間との勝負ともいえます。
西空が地平線まで見られるような見晴らしの良い場所を見つけ、日没直後から彗星を捜索しましょう。


3月10日に近日点を迎えるパンスターズ彗星は、そのころが最も明るくなりますが、日没後の西空の様子を示しています。
日没後30分くらいに見られる位置を表現しました。
彗星は、薄明の残る空の中にあって、見えにくく、3月下旬頃の方がむしろ高度も高く見やくなると予想されます。
双眼鏡でパンスターズ彗星をみつける
双眼鏡の例

双眼鏡の例

先月のコラム(第115号)では、彗星の接近に備えて双眼鏡購入のお話しをしましたが、私も今回の接近の観測のために1台双眼鏡を追加しました。
それは、某メーカーで新発売された6×30(倍率6倍対物レンズの口径が30ミリ)という比較的小型の双眼鏡で、倍率が低く一度に広範囲の星空を見ることができる機種です。
まずは、肉眼で彗星をさがし、みつけたら次は双眼鏡ではっきりと確認しましょう。肉眼でみつからないときは双眼鏡を捜索の道具として利用しましょう。

写真に撮ってみよう!

双眼鏡で彗星をはっきりと確認できたら、次はカメラで撮影してもましょう。
三脚にカメラを固定し、1秒から4秒くらいの露出をかければ彗星は写ります。
コンパクトデジタルカメラでも撮影はでき、自動露出、自動焦点(オートフォーカス)のまま、シャッターを押しても写ることが期待できます。
一眼レフカメラなどでも同様に撮影できますが、三脚だけは必需品です。また、できれば低速シャッターではブレが心配なため、リモートレリーズなどを使ってシャッターを切るといいでしょう。

隕石のもとは小惑星?

宇宙空間には多くの小惑星や小惑星のかけらのような物体、彗星や彗星が巻き散らかしていった小さなゴミのような物体が存在しています。
彗星が巻き散らかした物体は流星群の流星として私たちに多くの流星を見せてくれ、天文ショーとしても楽しみのひとつになっています。
流星群は毎年、私も観測していますが、流星の元となる粒子はとても小さいために、大気圏で燃えつき、地上にまで落下してくることはありません。
しかし、小惑星やそれらの破片のような大きな物体が地球大気圏内に突入すれば燃えつきないで、地上にまで落下することもあります。先月(2月)15日のロシアに落ちた隕石は、地上に大きな被害をもたらしましたが、こうしたことが今後も起きることが予想されます。
日本でも1996年1月7日の夕空に飛行機雲が目撃され、つくばに隕石が落下しました。さらにその前の1992年には島根県松江市の民家に隕石が落下し屋根と床を突き抜けて床下の地面にまで到達しました。これは美保関隕石と呼ばれています。
ところで、今年の2月16日未明には小惑星が地球に2万8千キロまで接近しました。
これは静止衛星がある高度3万5千8百キロよりも地球に近い位置になります。
この接近の現象を見ようと多くの天文ファンが注目しました。
私も栃木県栃木市の渡良瀬遊水地北端まで出かけ、写真撮影を行いました。位置はちょうどしし座のお尻にあたる部分付近で見ることができました。読者の皆様の中にもこの小惑星接近を観測された方がいらっしゃることと思います。


接近小惑星(2012DA12)の姿
撮影地:栃木県栃木市内渡瀬遊水池の北
撮影日:2013年2月16日午前5時~5時6分
各5秒露光の写真を4コマ合成
カメラ:ニコンD600  レンズ:ニッコール24-85

3月の天文情報

曜日月齢天文現象など
18.8
19.8
20.8
21.8
22.8啓蟄二十四節気 下弦の月 月の赤緯が最南
23.8月の距離が最近
24.8
25.8
26.8
1027.8パンスターズ彗星が近日点通過
1128.8
120.3新月  月が天の赤道を通過(北半球へ)
131.3
142.3
153.3
164.3
175.3
186.3月と木星が接近
197.3月の距離が最遠  月の赤緯が最北
208.3春分の日  春分(二十四節気)  上弦の月
219.3
2210.3
2311.3
2412.3
2513.3
2614.3月が天の赤道を通過(南半球へ) 金星が外合
2715.3満月
2816.3月とおとめ座スピカが接近
2917.3
3018.3
3119.3月の距離が最近

3月の星空

3月になりますと、それまでは南の空に君臨するように輝いていたオリオン座が、だんだんと西の空に傾いて見えるようになってきます。と同時に東の空からは春の代表的な星座のしし座が頭を先頭に昇ってきます。
北の空を見ると、北斗七星が昇ってくるのも確認できます。星座でいうと北斗七星を含んでおおぐま座があり、北極星を含むこぐま座とともに、親子熊が見やすい時期になってきます。
冬の星座を名残惜しむとともに春の星座のお目見えを楽しみましょう。
春の星座の領域では、冬の星座とちがって、天の川が見られません。しかもきりりとした冬空と違って、なんだかぼやけたような星空の夜があります。暖かい夜ほど星空も寝ぼけたような感じがしますが、おだやかな星空にはそれなりの良さがあって、たとえば、かみのけ座などは暗い星が数多く集まっている星座ですが、夜空の中にその部分は小さな星が寄り集まっているような印象を受け、ボヤーとした星の領域のような雰囲気が感じられます。
今月は星空の案内も、南の空に加え北の空を掲載していますので、ご覧ください。
寒さもゆるみ、少しずつ暖かくなってくる時期でもあります。じっくりと春の星座を観察してみましょう。

3月の星空(背景黒)

3月の星空(背景黒)

3月の星空(背景白)

3月の星空(背景白)

3月の星空(北方向背景黒)

3月の星空(北方向背景黒)

3月の星空(北方向背景白)

3月の星空(北方向背景白)

3月中旬、21時ころの星空です。月の位置及び月明かりの影響は省略しています。画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。このコラムの星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ9」を使用しています
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。