つくばのこと、もっとわかれば もっとたのしい! 茨城県つくば市のケーブルテレビ局ACCSによる地域情報サイト

ちあきの星空コラム

第105回 安全な日食観測 (2012/04/04)

5月21日の日食を安全に見よう!

金環日食の姿

金環日食

8千3百万人が金環食を望める!

5月21日は金環日食が見られます。観察のためには準備も必要なことから、先月に続き今月も金環日食の情報をお知らせします。
日本での金環日食は、前回が1987年に沖縄で見られましたので、25年ぶりといえます。しかも、今回は日本列島を横断する形で太平洋側の広域で見られますので、金環日食現象として見られる人口は、約8,300万人といわれています。
次は、18年後の2030年6月1日に北海道地域で見られる金環日食まで待たなければなりませんので、今回の金環日食は、見逃せません。

安全に見る

日食グラスを使用して安全に見るさて、金環日食観察は強烈な光を持つ太陽を観察するわけですから、安全に見るということを心がけなければなりません。
太陽を直視すると眼に障害が出ますので、必ず専用の日食観察専用のメガネを用いましょう。
このメガネには商品名はいろいろありますが、ここでは「日食メガネ」と呼ぶことにします。
発売されている日食メガネは、単体で販売されているもののほか、書籍の付録として付いてくるものも多く、それらを含んで表で紹介します。
日食観察の際は、決して眼で直接、太陽を見ないでください。また、代用品として考えられる黒い下敷きやススを付けたガラス片、写真用フィルムの切れ端、さらに写真撮影用のNDフィルターなどを使って見ると眼を痛める危険性がありますから、決してこれらのものを用いて太陽観察をしてはいけません。

2分間以上連続して見ない

じっさいの観察では、専用の日食メガネを使っても、連続して2分間以上見ないようにしましょう。家族や友人間で日食メガネが1枚しかないときは譲り合ってお互いが安全に見られるように心がけましょう。
なお、日食メガネそのものは安全とはいえ、日食メガネの脇から直接太陽を覗いたりしないようにしましょう。少しでも直接太陽を見ないように!それが瞬間的なものであっても、視野に残像ができて対象が見えにくくなってしまいます。眼を大切にし、決して太陽を直接見ないようにしましょう。

天体望遠鏡で見る場合の注意点など

天体望遠鏡の対物レンズ前面に専用の特殊フィルターを付ければ太陽を見ることができます。
しかし、大勢の人が一度に見るためには投影法の方が安全で効率的ですから投影法での観望をお奨めします。
なお、金環日食中の細い太陽像でも専用特殊フィルターなしの天体望遠鏡(日食メガネでの代用はできません)で直接太陽を覗くと失明する危険性がありますので決して太陽を覗かないようにしましょう。

太陽フィルター
特殊フィルターを取り付けて見る
投影法では一度に多くの観望客に見せることができ、しかも安全に見られる
日食メガネのいろいろ

市販品の日食メガネの一部を表で紹介します。
専用の日食メガネとしての販売以外に、日食の解説本の付録としての日食メガネもありますので、望遠鏡ショップやカメラ屋さんだけでなく、書店でも買い求めることができます。
価格は、比較的安価なものが多く、書籍扱いのものは、いずれも解説がしっかりされています。
早めに買い求め、金環日食当日に、代用品を探したりしないようにしましょう。

[日食メガネ一覧表] ←クリックすると、日食メガネの一覧表PDFファイルが表示されます。

宵の空の金星

4月も宵の空には金星が輝いています。金星の輝きだけでも美しいものですが、月や星が近づくとさらに珍しい光景として感動を与えてくれます。4月25日には金星と月齢4.1の月が接近しますので、見逃さないようにしましょう。
3月の宵の空に見られた写真を3枚ご披露します。金星と木星との相互位置の変化が確認できます。

新宿新都心18時金星と木星金星木星月

木星と金星の位置関係の変化:
左の写真は金星と木星が最も接近した3月14日に東京都庁近くで撮影。中の写真は3月20日に茨城県龍ケ崎市内で撮影。そして右の写真は3月24日に群馬県神津牧場天文台で撮影したものです。わずか数日間ずつのちがいで双方の星の位置関係が大きく変化していることがわかます。
※画面をクリックすると拡大した写真を見ることができます。

4月の天文情報

曜日月齢天文現象など
9.5 
10.5 
11.5金星とすばる(プレアデス星団)が接近
12.5清明(二十四節気)
13.5月が天の赤道通過(南半球へ)
14.5 
15.5満月 月と土星とスピカが並ぶ
16.5月の距離が最近
17.5 
1018.5 
1119.5月の赤緯が最南
1220.5 
1321.5下弦の月
1422.5 
1523.5 
1624.5 
1725.5土星が衝
1826.5月が天の赤道通過(北半球へ)
1927.5水星の西方最大離隔(明け方の空)
2028.5穀雨(二十四節気)
2129.5新月
220.8月の距離が最遠
231.8 
242.8 
253.8細い月が金星に近づく(宵の西空)  月の赤緯が最北
264.8 
275.8 
286.8 
297.8上弦の月
308.8金星が最大光度(-4.5等)となる

4月の星空

4月の空には春の星座がひしめき合っていますが、その中でもひときわ目を引くのが、ライオンの姿に見立てたしし座です。しし座付近には赤く輝く火星が見られますので、星座の星と惑星とを見分けないと星座の配列をみつけるのに混乱してしまいます。
おとめ座にも土星が輝き、1等星スピカと共演していますから、星座のみしか見られない時とは趣を異にしています。
冬の空に比べて寒さが和らいだ分、穏やかな雰囲気の空となりますが、ゆっくり星座探しをしたり、天体望遠鏡で惑星を眺めたりするのに適した季節です。
晴れた夜は星見の時間を存分にお楽しみください。

4月の星空(背景黒)

4月の星空(背景黒)

4月の星空(背景白)

4月の星空(背景白)

4月中旬、午後9時前後の星空です。月の位置及び月明かりの影響は省略しています。画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。この星図及び本コラムで使用している星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ9」を使用しています。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。