ちあきの星空コラム
第90回 明け方の空に月と金星 (2010/12/28)
細い月の姿と明けの明星の輝き
寒い冬に早起きして明ける前の星空を眺めるには、それ相応の気合いが必要かもしれませんが、それだけに美しい光景を見ることができますので、ぜひ早起きにチャレンジして月と金星の接近する様子を見てみませんか?
チャンスはお正月の1月1日と1月後半の2回あります。
1回目は1月1日の5時50分頃。南東の空に注目しましょう。この日は元旦ですから初詣に早めに出かけ、そのついでに見るといった気軽な見方で構わないと思います。夕闇から東の空が朝焼けに輝き出す直前に細い弓状の月と金星(明けの明星)それに火星を見ることができます。
2回目は1月後半の29日から31日の3日間。この3日間にも南東の空に細い月と金星、火星を見ることができます。
特に、1月30日には金星と月が最接近しますから大注目です。
ぜひ、カメラで撮影にも挑戦してみましょう。コンパクトなデジタルカメラでも三脚につけて撮影すればスローシャッターでもぶれない写真が撮れるでしょうし、一眼レフなどの本格的なカメラではB(バルブ)撮影で長時間露光もできますから地上の景色を入れて良い構図でねらってみましょう。
木星を見て天王星を見る
夕空に明るく輝いている木星の姿を宵の明星(よいのみょうじょう=金星)と勘違いしている方もいらっしゃるかもしれませんが、金星は明けの明星として夜明け前の空に輝いており、宵に見えるのは木星の輝きです。
木星は、昨年の観測では表面模様の大きな2本の縞模様のうちの1本が見られない状況となっていましたが、その縞模様も今年は見えるようになってくることが期待されています。残念ながら2月下旬以降は、木星の見られる方向が太陽の方向と重なり、観測ができなくなってしまいますので、1月の観測は貴重です。みなさまも天体望遠鏡をお持ちでしたらぜひ、観測してみましょう。
その木星に天王星が大接近します。1月4日には角度にして31分程度まで接近して見え、双眼鏡では当然同一視野に入り、天体望遠鏡でも50~70倍程度のあまり高くない倍率にして見ると、しっかり同一視野内に見ることができます。
天王星は、単体では星空の中でどこら辺にあるのか天体望遠鏡の視野に導き入れるのがめんどうな天体ですが、今月は木星のおかげでみつけやすく、見るチャンスといえます。
1月4日だけでなく、しばらくは木星の近くにありますから、ぜひ観測しましょう。
私は先取りして昨年の内に木星と天王星を天体望遠鏡で観測していますが、黄色っぽく見える木星と青い色の天王星の色の違いを確認することができました。
1月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 土 | 26.4 | 元旦 初日の出 |
2 | 日 | 27.4 | 月の赤緯が最南 |
3 | 月 | 28.4 | |
4 | 火 | 29.4 | 新月 しぶんぎ座流星群の極大 木星と天王星の接近 |
5 | 水 | 0.7 | |
6 | 木 | 1.7 | 小寒(二十四節気) |
7 | 金 | 2.7 | |
8 | 土 | 3.7 | |
9 | 日 | 4.7 | 金星が西方最大離角(太陽と最も離れて見える 光度-4等) |
10 | 月 | 5.7 | 成人の日 月が天の赤道を通過(北半球へ) 月の距離が最遠 |
11 | 火 | 6.7 | |
12 | 水 | 7.7 | 上弦の月 |
13 | 木 | 8.7 | |
14 | 金 | 9.7 | |
15 | 土 | 10.7 | |
16 | 日 | 11.7 | |
17 | 月 | 12.7 | 月の赤緯が最北 |
18 | 火 | 13.7 | |
19 | 水 | 14.7 | |
20 | 木 | 15.7 | 満月 大寒(二十四節気) |
21 | 金 | 16.7 | |
22 | 土 | 17.7 | 月の距離が最近 |
23 | 日 | 18.7 | 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
24 | 月 | 19.7 | |
25 | 火 | 20.7 | |
26 | 水 | 21.7 | 下弦の月 |
27 | 木 | 22.7 | |
28 | 金 | 23.7 | |
29 | 土 | 24.7 | |
30 | 日 | 25.7 | 月の赤緯が最南 |
31 | 月 | 26.7 |
1月の星空
1月の星空は、冬の星座で埋め尽くされます。
星座をみつけるときに、最も親しみやすくみつけやすいのが三つ星のあるオリオン座です。このオリオン座をベースに星図との位置関係を照らし合わせて夜空を見上げれば、オリオン座周辺のほかの星座をみつけることができます、
オリオンの西側(オリオンに向かって右側)にはおうし座、北側(上、天頂付近)にはぎょしゃ座、そして東側には上からふたご座、こいぬ座、いっかくじゅう座、南へ下がっておおいぬ座と続きます。オリオンの南(下)にはうさぎ座が輝いています。うさぎ座は小さな星座ですが、今年の干支がうさぎですから、ぜひみつけてみましょう。
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。