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ちあきの星空コラム

第82回 宵の明星が見える (2010/05/07)

西空の金星

宵の明星と三日月

今年4月17日に撮影した夕空の月と金星:山のシルエットのそばに金星、月は三日月で、すばるのそばにあります。左上はおうし座の1等星アルデバランです

5月に入って、夕方の西の空に金星(明星=みょうじょう)が見やすくなってきました。
今年の春から10月はじめまで、金星は宵(よい)の明星として夕日が沈んだ西空に明るく輝く姿を見ることができます。

金星をみつけるときは西空の視界が開けたところで夕闇がせまりくるちょっと前からさがすといいでしょう。他の星にくらべると圧倒的に明るく、ほかの星が見え始める頃にはもう、ぎらぎらと輝いて見えます。

当然のことながら一番星で、だれでも簡単にみつけることができます。

月と金星が大接近!

5月16日(日曜日)には、夕方の西空に注目しましょう。

夕焼けの残る空に細い月と金星が超大接近している光景を見ることができます。

月と金星の接近具合はどの程度かというと、角度の0.9度。まるでトルコの国旗のような形状に見えます。

肉眼でも美しい光景として見ることができますが、双眼鏡を使って見てみましょう。そこには想像を絶する美しい光景が見られることでしょう。月の暗い、影になっている部分も地球の明るさを反映してかすかに見ることができますが、これを地球照(ちきゅうしょう)と呼んでいます。コンパクトデジタルカメラで、写真に残しておくこともできます。ぜひ撮影にもチャレンジしてみましょう。フラッシュをOFF(発光禁止)にして三脚にセットして撮影します。

露出はオートのままでかまいません。

コンパクトデジタルカメラでなく、一眼レフカメラをお持ちの方は、B(バルブ)シャッターがありますので三脚にセットし、構図をきちんと決め、露出時間を1秒、2秒、4秒、8秒と変えて撮影して適正露出のカットを選びましょう。傑作写真ができましたらプリントして飾ってみるのもいいものです。

星見の人数1000万人?

昨年は世界天文年2009でしたから多くの方々が星空体験をしたことでしょう。

世界天文年日本委員会事務局では昨年の星見人数を発表しました。これは、プラネタリウム館や天文台などでどれだけの来場者数があったのか、また天体観望会などでどれだけの星見体験者があったのかを全国集計したものです。

その結果、星見人口の集計が、合計730万9685人となりました。

この中には、私自身の活動による星見人口も含まれていますし、仲間達による星見活動の結果も反映されています。

世界天文年2009は昨年のイベントでしたので、直接的には既に終了してしまったともいえますが、今年はプロの天文学者やアマチュアの天文ファンを含めた天文愛好者の連絡組織の提案や街角で星見を楽しむイベント「まちかど星空観望会」などが提案されています。多くの天体観望会を開催するボランティアなどが、星見は楽しいイベントだと認識し、これからも星見の活動を継続して進めようという機運が全国的に高まってきました。

私自身もそうした考えに基づいて、星見をとおして「感動した!」とか「また星見をやりたい」という感想が聞けるように活動を継続していきたいと思っています。

星まつりや天体観望会などでお会いしましたら、ぜひお声かけください。

5月の天文情報
曜日月齢天文現象など
116.6月が最南 月がさそり座σ星を隠す(掩蔽)
217.6八十八夜
318.6憲法記念日
419.6みどりの日 月が最南 金星と水星が最接近(夕方の西空)
520.6こどもの日 立夏(二十四節気)
621.6下弦の月 みずがめ座η流星群が極大
722.6月の距離が最遠
823.6
924.6月が天の赤道を通過(北半球へ) こと座η流星群が極大
1025.6
1126.6
1227.6
1328.6
140.1新月
151.1
162.1月が最北 月と金星の接近(夕空)
173.1
184.1
195.1
206.1月の距離が最近
217.1小満(二十四節気) 上弦の月
228.1金星とM35散開星団の接近 月が天の赤道を通過(南半球へ)
239.1
2410.1
2511.1
2612.1水星が西方最大離角(明け方の東空に見られる)
2713.1
2814.1満月
2915.1
3016.1月が最南
3117.1

5月の星座

先月説明した北斗七星からたどる春の大曲線では、うしかい座の1等星アルクトゥールスと、おとめ座のスピカをみつけることができましたが、今月は「春の大三角」をみつけ、その周辺の星座もみつけましょう。アルクトゥールスとスピカを結ぶ線を底辺として、しし座のデネボラを頂点と見立てた三角形を星空に描きましょう。それが、ほぼ正三角形に近いかたちの春の大三角です。下に示す星図をたよりに一度覚えると、次からは簡単にみつかるようになります。 ただし、今年はその付近に土星が明るく輝いているために三角形の印象と同時に土星の印象も一緒になるかも知れませんね。

5月の星空(黒)

5月の星空(白)

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。
※このコラムで使用している星図は、(株)アストロアーツの天文シミュ レーションソフトステラナビゲータ.8から出力し、加工したものを使用しています
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。