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ちあきの星空コラム

第248回 すい星を見る (2024/03/04)

冬の星座から春の星座へ

3月に入ると夜空に見られる星座も冬の星座から春の星座に移行していきます。
四季を通じてそれぞれの季節の星座が見られるわけですが、四季を通じて星座が変化して見られるのは、地球が太陽の周りを公転しているからなのです。
また、地球自体が自転していますので、見られる星座は一晩のうちにも変化します。
春の星座が春に見られるというのは、おおよそ20時前後の星空を見上げたときに見られる星座のことで、深夜や明け方には別の季節の星座を見ることができます。
日没を迎え夕焼け空からやがて薄明が終わり、あたりが暗くなり夜空を見上げると西空にはオリオン座などの冬の星空がまだ名残惜しそうに輝いています。
しかし、時刻が過ぎ、すっかり夜のとばりが降りる頃には、しし座など春の星座が見られるようになります。
地球の自転により時間の経過とともに星座が移り変わり、星空でも季節感を感じられるようになることでしょう。
黄道12星座(お誕生月の星座)の春の星座は、かに座、しし座、おとめ座です。また、みなさんが良く知る北斗七星(おおぐま座)やうしかい座も春の星座です。
冬の星座をおしみつつ、春の星座の到来を喜び、じっくりと星見を楽しみましょう。

春に見る北の空(冬の星座ぎゃしゃ座と春の星座おおぐま座などが見られる)

すい星を見る

すい星(すいせい)と発音する星には、水星と彗星があります。3月にはこの2種類のすい星を見ることができますので、ご紹介します。

水星

水星は、太陽系にある8惑星のうち、最も太陽に近い公転軌道を持つ惑星です。
すなわち最も太陽系の内側を回っていることになり、太陽の周りを一周するのも速く、わずか0.24年で一周してしまいます。今年は7回、地球に接近します。その内訳は、地球から見て夕方の西空に見られる東方最大離角が3回。明け方の東の空に見られる西方最大離角が4回あり、いずれも最大離角の頃が水星を見るチャンスとなります。
いつも太陽に近い方向にしか見られませんが、それでも太陽からある程度離れた位置となり、最も離れているのが最大離角ですからその前後の日程で観察しないと見えないままに終わってしまいます。太陽と地球の間に水星が入る内合や、太陽の向こう側に位置する外合では地球から見た場合、水星の位置は太陽のすぐそばに見えることになり、とても危険ですので、そうしたときは見てはいけません。
3月には夕方の西空の中で3月25日に東方最大離角を迎え、見るチャンスが到来します。実際に見るには天体望遠鏡は不要で肉眼でみつけることができますが、夕日が沈んだ後、しばらくは空が明るいので、双眼鏡を補助具として利用するといいでしょう。

3月の水星接近時の運行の様子と今年の接近日(7回あります)

夕空の水星(茨城県龍ケ崎市内で撮影)

彗星

ここではもうひとつのすい星である彗星の情報をお知らせします。
水星も彗星もいずれも太陽系の天体なのですが、特性は全く異なります。
水星が惑星の中で最も太陽に近い位置を公転し、表面は固体で温度も高いという特徴を持っていますが、彗星は太陽をひとつの焦点とする長い楕円軌道を描いて公転しているものが多く、氷混じりの個体を核として太陽に近づくと氷が溶けて水分やガスを放出して、いわゆる「尾」が見られるようになる天体で、その見え方から「ほうき星」とも呼ばれています。しかも彗星は複数存在し、太陽に近づく頃に地球からも見られるようになります。
3月から4月にかけて、ポン・ブルックス彗星が見られます。公転周期70年の楕円軌道をもち、有名なハレー彗星が公転周期76年で周期が近く、ハレー型彗星に分類されています。
初めての発見は、1812年7月21日にジャン=ルイ・ポン(フランス、1761-1831)によって発見され、今までに何度か太陽に接近したときに観測されています。
今回の接近では、彗星が太陽に最も近づく近日点を2024年4月21日に通過する予定であり、最大等級は4等級台になるとの予報が出されています。
天体望遠鏡や双眼鏡を利用したりカメラで写真撮影をすれば、3月中旬頃から観測ができます。
4月に入ればさらに見やすくなりますが、ここでは3月に見られる彗星の大まかな位置を示しておきます。
周期が似たハレー彗星の1986年に撮影した写真も参考に掲載します。このとき、ハレー彗星の明るさは4等級でした。
さらに、昨年2月に撮影した同じく明るさが4等級だったZTF(ディーティーエフ)彗星の写真も参考に掲げます。

夕空の中に見られますが、双眼鏡か天体望遠鏡を使いさがしてみましょう。日没後、おおよそ1時間くらいした西空に見ることができます。眼視観測よりも写真撮影をした方がその存在をみつけやすいかもしれません。観察する日がこの前後の日であればそう違わない位置に見えますので、ご安心を!

1986年3月に撮影したハレー彗星..千葉県鴨川市に遠征して明け方前に見られたハレー彗星を撮影しました.

昨年2月1日に霞ヶ浦の湖畔で撮影したZTF彗星

3月の惑星

水星

3月25日に東方最大離角を迎え、3月後半は絶好の観測時期となります。上の本文で説明している内容に基づいて、ぜひ本物の水星を確認しましょう。(明るさ-マイナス1.8~1.1等級)

金星

明けの明星として明け方の南東の空に輝きますが、じょじょに低空になり、観察がむずかしくなるでしょう。(明るさ-3.9~-3.8等級)

火星

2025年1月に地球に接近しますが、今は遙か遠く離れた外合あとの太陽に近い方向に見えます。具体には、やぎ座からみずがめ座付近に見られるのですが、明け方の低空で観測には適しません。
(明るさ1.3~1.2等級)

木星

おひつじ座の中で煌々と輝いている木星は、夕空の中でとてもめだちます。観測シーズンとしては先月までで、西空の低空の中での観測となります。こののち、5月15日に太陽の向こう側に位置する合を迎えます。今年の後半にはまた観測好機を迎えます。
(-2.2~-1.9等級)

土星

2月29日に合となったばかりで、観測には適しません。今年は夏以降にその姿を楽しむことができるようになります。

3月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
20.2土星が合
21.2
22.2
23.2下弦の月
24.2啓蟄(二十四節気)  月の赤緯が最南
25.2
26.2
27.2ポン・ブルックス彗星とアンドロメダ座α星が最接近
28.2月が金星に最接近
1029.2新月 月が土星に最接近 月の距離が最近
110.7月が天の赤道を通過、北半球へ
121.7
132.7ポン・ブルックス彗星とアンドロメダ座δ星が最接近
143.7月と木星が接近
154.7月とプレアデス星団が接近
165.7
176.7上弦の月 月面Xが見られる 月の赤緯が最北
187.7
198.7
209.7春分(二十四節気) 春分の日
2110.7
2211.7金星と土星が最接近(08時15分)
2312.7ポン・ブルックス彗星とさんかく座M33が最接近
2413.7月の距離が最遠
2514.7満月(ワームムーン) 水星が東方最大離角
2615.7
2716.7
2817.7
2918.7
3019.7
3120.7ポン・ブルックス彗星とおひつじ座α星が最接近
3月の星空案内図
南の星空

背景黒

背景白

北の星空

背景黒

背景白

3月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。この星図では、月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ12」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。