ちあきの星空コラム
第234回 2023年の天文現象 (2023/01/04)
2023年の天文現象
あけましておめでとうございます。
昨年は、つくばもんの星空コラムをご支援いただき、ありがとうございました。
引き続き、本年もよろしくお願いいたします。
さて、今月は2023年の幕開けに際して、今年起きる天文現象などをお知らせします。
火星を見よう!(1月~3月)
昨年12月1日に地球に最接近した火星は、だんだんと遠ざかっていきますが、今年の1月~3月頃は、まだ地球からそう遠くはありませんから観察が楽しみな時期といえます。
火星を天体望遠鏡で見ると、昨年12月ほどには大きく見えませんが、恒星と異なり面積を持った円盤状に見え、表面の模様も見ることができます。
火星は、おうし座の中で輝いていますが天体望遠鏡を使わずに星空の中で輝いている様子を観察することもできます。色の違いを恒星と比較してみましょう。火星はどの星よりも赤く輝いています。オリオン座の1等星ベテルギウスやおうし座の1等星アルデバランも比較的赤く見えますが、色合いの微妙な違いを観察しましょう。また、その他の冬の星座に見られる1等星、オリオン座のリゲルやこいぬ座のプロキオン、ぎょしゃ座のカペラなどとも比較をしてみましょう。このことによって、火星の色を実感するだけでなく、それぞれの恒星の色の違いもよく理解できるようになることでしょう。
次に火星の位置に注目してみましょう。火星は、太陽の周囲を回る軌道で移動していますが、地球から見ると星座の中の星々の間を移動していくように見られますので、その様子を確かめることができます。日々移動していく様子を確かめましょう。
1月23日 金星と土星が最接近
金星は宵の明星として、12月末頃から夕方の西空に見えるようになってきましたが、1月23日には土星と大接近します。
日没後に夕焼けが見られる西の低空に、ひときわ明るく輝く金星をさがし、続いて、付近に輝く土星をさがしましょう。
3月2日 金星と木星が大接近
3月2日の19時41分には、金星と木星が夕空の中で大接近します。
西側の空が良く開けた観察場所を探して、ぜひ観察しましょう。
肉眼だけでなく、天体望遠鏡を使っても低倍率なら同一視野の中で見られます。もちろん双眼鏡での観察も有効です。
4月10日ごろ 金星がプレアデス星団に接近
夕方の西の空で-(マイナス)4.1等級で輝く金星がプレアデス星団(和名「すばる」に接近します。
肉眼でも見ることができますが、双眼鏡があるとよりはっきりと確認できます。
観察できる日数も4月10日から12日まで可能ですので、3日間の間にはお天気が良くてじっさいに観察できるチャンスがあることでしょう。
4月20日 3年ぶりの部分日食
3年ぶりに部分日食が見られます。
しかし、見られる地域が限定され、千葉県房総半島、紀伊半島の南部、四国九州の南部地域それに太平洋の島々といった地域で見ることができます。
なお、千葉県館山での食分は、0.0117と小さく、関東地方からは伊豆諸島や小笠原諸島まで出かけると食分が多くなります。
今回の部分日食は食分がわずかなので、天体望遠鏡に太陽観測用の特殊なサングラスを用いての観測か、太陽を投影して間接的に観測する方法を用いなければなりません。
太陽は直視すると失明の危険性もあるので、決して直接覗いてはいけません。ご注意の程をよろしくお願いします。
6月2、3日 プレセペ星団の中を火星が通過
火星(1.6等級)が、かに座のプレセペ星団(M44)の中を6月2日から3日にかけて通過していきます。光害の少ない地域では肉眼でもかろうじて観察できますが、双眼鏡を使うと確実に観察が可能です。
その後、6月13日から14日にかけて、金星(-4.4等級)がプレセペ星団のすぐわきを通過していきます。
観察にはやはり双眼鏡があると便利です。
8月13日 ペルセウス座流星群が極大
秋の星座であるペルセウス座はこの時期、夜半過ぎに東の空から昇ってきますが、昇ってくる前から流れ星は見ることができます。
観察は、8月12~14日の夜におこなうといいでしょう。
13日の未明ころには1時間に40個くらい。
翌14日の未明には1時間に60個くらい流れますので、期待しましょう。月明かりも少なく、良い条件で観察ができます。
9月21日 アンタレスの食
さそり座の1等星アンタレスが、月齢6.4の月に隠される現象が9月21日に見られます。
といってもアンタレスが月に隠される潜入は明るいうちに起こりますので、見られるのは月縁からアンタレスが出現するところです。
金星の出現時刻は各地で異なりますが、東京では18時51分の予報となっています。天体望遠鏡や双眼鏡をお持ちの方はぜひ観測してみましょう。
10月24日 金星の西方最大離角
今年の金星は、1月から7月頃まで宵の明星として見ることができますが、8月13日に太陽と地球の間に入る内合(ないごう)を経て、9月頃からは明けの明星として、明け方の東の空に見ることができます。
10月24日には西方最大離角を迎え、太陽との離角が大きく、明け方に天高く見ることができます。早起きして、金星の明るい輝きを確認してみましょう。
10月29日 部分月食
10月29日には部分月食が見られます。
昨年は11月8日に皆既月食が見られましたが、今年は部分月食が見られます。部分月食とは、地球の本影の中に月の一部分が入り込んで部分的に暗く見える現象で、部分月食が最大となる時刻は夜明け前の5時14分で、食分は0.12とあまり大きくはありませんが、部分的に満月の一部が欠けて見える現象です。早起きして月食を観測するといいでしょう。
12月15日 ふたご座流星群の極大
今年のふたご座流星群は、極大となるのが12月15日午前2時頃で、月明かりもなく、観測に最適な条件となります。極大の頃は1時間に100個以上の流星が流れることが期待されます。
そのほかの天文に係る行事や現象など
そのほか、毎年7月7日には、七夕(たなばた)のお祭りがおこなわれます。短冊に願い事を書いて笹竹に飾り軒などに立てかける行事は、各家庭だけでなく、いろんな団体などでも行事として楽しんでいる様子が毎年報道されています。
星のお祭りとしては1年を通してこの七夕まつりが最大のお祭りといえますからぜひ、お祝いし、楽しみましょう。また、7月7日ですとまだ梅雨明けとなっていない地域も多いことから、昔の伝統どおり、旧暦の七夕(今年は8月22日)を伝統的七夕としてお祝いすることも人気が出てきました。こちらもぜひ、お祝いしたいものです。
次に、国立天文台が提唱しているスターウイーク(星空に親しむ週間)は、毎年8月1日から7日までとなっています。この時期、各地の科学館や天文台などで天文に関するイベントなどが開催されます。イベントがありましたらぜひ、参加してみましょう。
9月29日は中秋の名月です。旧暦の秋の真ん中(中秋)にあたる旧暦8月15日の夜に月見団子やススキの穂などをおそなえして月の出を待ち、月を鑑賞する行事です。農作物の豊作を願った行事でもありますが、翌月の後の月10月27日(旧暦9月13日)の十三夜もお祝いする習慣があります。
土星は、8月27日に衝を迎えますので、夏休みが明け、秋には見ごろを迎えます。
木星は合を4月12日に迎えますので、3月頃までは夕方の西空に見ることができますが、その後しばらくは、見ることができず、5月頃から明け方の空で見ることができるようになります。夕空の中で観測しやすい時期は11月、12月頃となります。
水星はめったに見ることができないといわれていますが、予報に基づいて、ていねいに探せば見ることができます。今年の水星の観測好機は、夕空(西の空)では4月12日頃、8月10日頃、12月4日頃。明け方の空(東の空)では、1月30日頃、5月29日頃、9月22日頃となります。
惑星情報
1月に観測しやすい惑星は、土星、木星それに火星です。
土星はやぎ座、木星はうお座、火星はおうし座にあり、3個とも明るく輝いています。
各惑星は肉眼でも星座をかたちづくる恒星よりも明るいのでみつけるのは容易ですが、火星は特に日々の移動が大きいため、位置を確認し、星図の中に記入していくと移動している様子がわかります。
天体望遠鏡があれば大きく拡大された惑星像を見ることができます。
水星
1月末ごろになりますと水星は明け方の南東の低空に見られ、1月30日に西方最大離角を迎えます。明るさは-(マイナス)0.2等級まで明るくなります。
金星
宵の明星として、徐々に高度を上げていきます。
-3.9等級ととても明るく、夕方の西の空にすぐにみつけることができることでしょう。
火星
昨年の12月1日に地球に最も接近した後、地球から徐々に遠ざかりつつありますが、おうし座にあってとても明るく輝きます。他の惑星と異なり、赤い色をしています。
木星
うお座の中で周囲のどの星よりも明るく輝いており、夕方も一番星の座を金星と競っているように明るく輝いています。
天体望遠鏡では、本体の縞模様のほか、ガリレオ衛星(4個)も見ることができます。明るさは-(マイナス)2等級です。
土星
夕空の中、南西の空のやぎ座の中にあり、2月17日には合となりますので、日々、みつけにくくなってきます。
明るさは0.8等星で輝いています。
1月の天文情報
(月齢は正午の値)
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 日 | 8.7 | 元旦 |
2 | 月 | 9.7 | |
3 | 火 | 10.7 | 月と火星が大接近 |
4 | 水 | 11.7 | しぶんぎ座流星群が極大 |
5 | 木 | 12.7 | 地球が近日点を通過(太陽に最も接近する日) |
6 | 金 | 13.7 | 小寒(二十四節気) 月の赤緯が最北 |
7 | 土 | 14.7 | 満月 |
8 | 日 | 15.7 | 月の距離が最遠 |
9 | 月 | 16.7 | 成人の日 |
10 | 火 | 17.7 | |
11 | 水 | 18.7 | |
12 | 木 | 19.7 | |
13 | 金 | 20.7 | |
14 | 土 | 21.7 | 月が天の赤道を通過南半球へ |
15 | 日 | 22.7 | 下弦の月 |
16 | 月 | 23.7 | |
17 | 火 | 24.7 | |
18 | 水 | 25.7 | |
19 | 木 | 26.7 | |
20 | 金 | 27.7 | 大寒(二十四節気) 月の赤緯が最南 |
21 | 土 | 28.7 | |
22 | 日 | 0.3 | 新月 |
23 | 月 | 1.3 | 金星と土星が最接近 月と金星、土星が最接近 |
24 | 火 | 2.3 | |
25 | 水 | 3.3 | |
26 | 木 | 4.3 | 月と木星が最接近 月が天の赤道を通過北半球へ |
27 | 金 | 5.3 | |
28 | 土 | 6.3 | |
29 | 日 | 7.3 | 上弦の月 |
30 | 月 | 8.3 | 水星が西方最大離角 |
31 | 火 | 9.3 | 月が火星に最接近 |
1月の星空案内図
南の星空
北の星空
田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。