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ちあきの星空コラム

第209回 木星と土星の接近 (2020/12/02)

木星と土星が超接近して見える!

夕空を飾る木星と土星は、8月の頃から夕空に見られ、天体観望会でも人気の対象として多くの人たちに見つめられてきました。
そのふたつの星が、だんだん近づいて見られるようになっているのにお気づきでしょうか。
11月の頃よりも12月に入ってからは、木星と土星の位置がより近づき、毎日観察すると、だんだんと接近してきている様子がわかり、その位置関係を星図に書き込むか、写真に撮れば、日々の写真から日ごとに近づいていくふたつの星の様子を記録することができます。

2020年11月19日の夕空に輝く木星、土星。この日は月がそばで輝いており、また、野口聡一さんを載せたISS(国際宇宙ステーション)も見えました。

12月21日から22日にかけては、ついにその2星が超接近し、角度にしてわずか6′(=角度でいう1度の10分の1)まで近づきます。一見見るとひとつの星のように見えるかもしれませんが、良く見るとふたつの星の集まりだということがわかります。こうした惑星同士の接近を会合と呼んでいます。
双眼鏡や天体望遠鏡を使うと、この会合をより正確に確認することができます。
新約聖書の「マタイによる福音書」には、キリストが誕生する時に、頭上に明るい星が輝いて誕生を知らせたとあります。その星をたよりに東方から3人の博士がキリストの誕生を祝いにやってきたそうです。
このときに目標になったのが頭上に輝いた星で、誕生したところの土地の名前からベツレヘムの星と呼ばれています。

12月21日午後5時45分の南西の空に木星と土星が集合している様子です。この図は(株)アストロアーツの許諾を受け、ステラナビゲータ11を使用してシミュレーションしたものです。

クリスマスツリーの木の上に星が輝いていますが、これがベツレヘムの星なのです。研究者たちは、実際は、これが天上のどの星なのか、何という星だったのか、星の動きから研究し、議論を呼びました。
その説の中に、惑星同士の会合ではないかという説があり、今回の木星と土星の会合は、まさにベツレヘムの星だったのではないかといわれています。
こうした話題も交えて2惑星の会合を見てみるのも楽しいかもしれません。

クリスマスツリーの一例。てっぺんに輝く星がベツレヘムの星と呼ばれています。

ふたご座流星群を見よう

ふたご座流星群は12月14日の夜に極大を迎えるので、ぜひ観測しましょう。
この流星群の活動期間は、12月5日から18日で、その期間内はふたご座を放射点とした流れ星が見られるのです。
12月14日の朝にピークを迎えますので、多くの流星を見るためには、12月13日の夜から14日の明け方まで見るのが最も望ましいといえます。今回は月明かりの影響もなく、とても観測条件が良いので、絶好のチャンスといえます。
見られる方角は、全天のどの位置にも見られる可能性があり、決してふたご座を視野に入れて観測する必要はありません。ふたご座の見えないベランダからでも星空さえ望めれば、流星を見ることができます。
その際、ベランダに部屋の明かりが漏れないように、厚手のカーテンで部屋からの明かりをブロックしましょう。また、一晩中観測するのがつらい方は、1時間だけでも構いません。1時間に何個流れたか、流星数を数えるだけでも立派な観測記録といえます。

12月の惑星

12月に入ると木星と土星は接近してきますが、西の夕空の中、まだ真っ暗になる前、薄明のある中での観測となります。
火星は地球から離れていきますので、だんだんと暗くなっていきますが、肉眼でも良く目立ち、天体望遠鏡を使えばまだ観測可能です。
各惑星の位置や見え具合などは次のとおりです。

水星

太陽に近い位置にあり、今月は観測に適しません。

金星

明けの明星として明け方の東の空に-3.9等級の明るさで輝いています。
早起きして東の空を見てみましょう。明け方に見える星の中で最も明るく輝いていますので、すぐにみつけることができます。

火星

火星は、夜中に南の天高い位置にあり、赤い色をして明るく、とても目立ちます。
今月も観測好機が続いています。明るさは、月初めは-1.1等級、月末でも-0.3等級という明るさで輝き、うお座の中に見られます。

木星

-1.9~-1.8等級の明るさで輝き、土星と近い位置にあります。
土星と最も接近するのは12月22日ですが、日本からは21日の観測で、最も近づいている様子が観測でき、22日の夕方もほぼ同様に見られます。
肉眼で大接近の様子は十分に楽しめますが、双眼鏡や天体望遠鏡でもそれぞれ違った様子で観測できます。

土星

いて座の中にあって、明るさは0.6等級。木星と共に輝いています。
12月21日、22日の木星との大接近も楽しみですね。

12月の星座観察

12月は、クリスマスのシーズンとして町はにぎわい、星空も冬の星座が東の空から昇ってまいりますので、にぎやかな星空を楽しむことができます。
夕方の西空にはまだ秋の星座が名残惜しく残っていますが、午後9時頃には、冬の星座が見られるようになります。
冬の星座の中で早くから見られる星座として、北東の空にはぎょしゃ座、東の空からはおうし座が見られます。
ぎょしゃ座には1等星カペラが輝き、その形は五角形に見える印象的な姿です。
おうし座は、肉眼でも6個に見えるプレアデス星団(和名すばる)が東の空から昇ってきますが、やがて1等星アルデバランを含むヒヤデス星団も昇ってきて、とても風情のある光景をつくります。
深夜になると、オリオン座やその他の冬の星座が見られるようになります。
寒い中ですが、星座さがしを楽しみましょう。

冬の到来を知らせるすばる星団はいにしえの頃より、日本でも親しまれてきた星です。
ぜひ、東の空にみつけてみましょう。

12月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
15.9
16.9
17.9月の赤緯が最北
18.9
19.9
20.9
21.9大雪(二十四節気)
22.9下弦の月
23.9
1024.9月が天の赤道を通過、南半球へ
1125.9
1226.9
1327.9月の距離が最近 細い月と金星が大接近
1428.9ふたご座流星群が極大
150.4新月
161.4月の赤緯が最南
172.4細い月と木星、土星が大接近
183.4
194.4
205.4
216.4冬至(二十四節気)
227.4上弦の月 木星と土星が超大接近(21~22日)
238.4月が天の赤道を通過、北半球へ
249.4月が火星に最接近
2510.4月の距離が最遠
2611.4
2712.4
2813.4
2914.4
3015.4満月 半影月食 月の赤緯が最北
3116.4

12月の星図

南の星空

12月の南の星図(背景黒)

12月の南の星図(背景白)

北の星空

12月の北の星図(背景黒)

12月の北の星図(背景白)

12月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の範囲によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ11」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。