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ちあきの星空コラム

第169回 夏休みに天体観測をする (2017/08/02)

8月は夏休みシーズンです。小中学生だけでなく、高校生、大学生も夏休み、さらに働き方改革などと銘打って大人の世界も仕事だけの人生を送らないように家庭や趣味を通じて心豊かな人生を歩むことが大切だと認識されつつある昨今です。
そこで、この夏休みには星空を見上げて見ませんか。
いろんな趣味の世界がある中、天体観測もただの科学ということでなく、星空の世界といったロマンチックな、あるいは神秘的な世界に触れることができますよ。
今年の8月には盛りだくさんの天文現象が見られます。
ぜひ星空に目を向けて見ましょう。

8月8日に部分月食を観測する

8月8日(火曜日)には部分月食が見られます。月食が見られるということは、月と地球と太陽が一直線上に並ぶということになりますが、次の新月(8月21日)には北アメリカで皆既日食が見られ、この時も太陽と月と地球が一直線に並びます。
めずらしい天文現象の部分月食を楽しみましょう。

部分月食の様子

部分月食の様子

今回の部分月食は夜半過ぎに見られますので、早寝して早起きして見るのがおすすめです。
午前2時22分頃から始まり、南西の空(高度角20度前後、地域によってやや異なります)に見られます。

月食の経過
部分月食の始まり   2時22分頃
部分月食の最大時刻  3時20分頃
部分月食の終わり   4時18分頃

月食は、地球から見て太陽と反対の方向に月があり、必ず満月の時に起きる現象です。
太陽の光によって輝いている月が欠けるのは、地球の影が月面に投影されているからなのです。
この神秘的な月食の様子をぜひご覧ください。

この部分月食と北アメリカでの皆既日食との関連

皆既日食の様子(2001年6月21日アフリカ南部日食)

皆既日食の様子(2001年6月21日アフリカ南部日食)

8月21日(日本の時刻では8月22日)にアメリカ合衆国の北部を太平洋側から大西洋側まで日食の影が横断していきます。
この日食は、太陽と地球の間に月が入り、一直線に並びますが、8月8日の部分月食とはその配列が異なっていることがわかります。しかし、残念ながら日本からはこの日食は見ることができません。
アメリカの陸地に落ちた月の影をその影の中から太陽を見ると、月によって隠された太陽の様子が見られ、太陽の本体は見えませんが、周囲に伸びるコロナやプロミネンスの姿を見ることができます。
私もこの日食を観測にアメリカ西海岸に近いオレゴン州に出かける予定をしています。もし、晴れて日食観測に成功しましたら、来月のこのコラムで写真を披露したいと思います。

8月13日にはペルセウス座流星群を見る

宇宙の放浪者などと呼ばれる彗星は、太陽に近づくと彗星の本体からガスやチリ(ダスト)を放出しながら宇宙空間を移動していきます。
その彗星の通り道を地球が通過するとき、彗星から放出されて宇宙空間に漂うダストが地球に飛び込んできて、地上からは流れ星(流星)として見られるのです。
一般的に宇宙空間をさまよっているチリや星のかけらが地球に飛び込んでくる流星は散在(さんざい)流星と言いますが、彗星のまき散らしたダストの通り道を地球が公転により通過すれば多くの流星が見られることになります。
これが流星群の流星で、散在流星に対して、群流星と呼んでいます。また、1年間の地球の公転軌道の中に複数の彗星の通過した通り道がありますが、それぞれの通り道を地球が通過するときは、ほぼ毎年同じ月日のころとなりますので、それぞれの流星群は毎年およそ同じ時期に観測できるのです。このような流星群を識別するために、それぞれの流星群に名前が付けられています。
8月12日または13日に見られる流星群は「ペルセウス座流星群」と呼ばれているのです。

流星群

流星群

今年のペルセウス座流星群は8月13日の未明にもっとも多く流れると予想されていますので、ぜひ、夜更かしして観測してみましょう。
流星の観測では天体望遠鏡のような特別な道具や装置は必要がなく、ご自身の目すなわち、肉眼と時計、記録用のメモ帳などさえあれば立派に観測ができます。
ペルセウス座流星群では1時間に20個~40個くらいの流星を観測できますが、空の明るさや空気の透明度などの環境によって観測数も変わってきます。
各時刻帯の1時間当たりの流星観測数をメモしておくだけでも立派な観測となります。ぜひ、チャレンジしてみてください

星座観察

星座観察は、直接的には観測とは言えませんが、いろんな観測の際に位置関係を記録したりするのに星座を覚える必要がありますので、星座観察も意味があります。
この夏休みを利用して星座を覚えていきましょう。
夏の大三角に関係すること座、わし座、はくちょう座などをメインにその他の星座も星座早見や星図を利用してさがしてみましょう。

夏の大三角付近の星座

夏の大三角付近の星座

この夏休みは土星の観測に適しています

天体望遠鏡で撮影した土星(撮影:浦辺守)

天体望遠鏡で撮影した土星(撮影:浦辺守)

この夏は土星が見頃です。
土星は、環をもつ独特の姿から人気のある惑星で、今は環が大きく傾いて、天体望遠鏡で見るとその姿をはっきりと確認することができます
見られる位置は、南の空で、その付近では最も明るい星として輝いています。
星座では、へびつかい座の中にあります。
見つけ方は、南の低い空にさそり座をみつけ、その中にある赤く輝く恒星のアンタレスをさがしましょう。アンタレスがみつかったら下図の星図の中でアンタレスと火星の位置を確認してみつけます。
次に天体望遠鏡でその姿を観察しましょう。環の神秘的な姿を見ることができます。

南の地平線に近い位置にさそり座が見られますので、その中の赤い星アンタレスをさがしましょう。土星はその近くにあります。星図は許諾を得てアストロアーツのステラナビゲータを使用しています。

8月の星空など

8月の夕立あとのカラッと晴れた星空は、空気中のチリ、ホコリをお掃除してくれ、クリヤーな星空を望むことができます。夏の大三角以外にも夏の星座はたくさんありますから、じっさいの星空で星座をみつけましょう。
なお、星座を見る時、町明かりは障害となりますので、なるべく光害(ひかりがい)の少ない場所で星座観察をしましょう。
また、じっさいの夜空では月明かりが星を観察するときの障害になることに気づいた読者もいらっしゃることかと思います。
月齢を確認し、満月に近い夜では観察が不適ということを星空を見ながら体験しましょう。

8月の天文情報

曜日月齢天文現象など
8.7
9.7月と土星が接近 月の距離が最遠
10.7
11.7
12.7月の赤緯が最南
13.7
14.7立秋(二十四節気)
15.7満月 部分月食
16.7
1017.7
1118.7山の日
1219.7月が天の赤道を通過(北半球へ)
1320.7ペルセウス座流星群が極大
1421.7
1522.7下弦の月
1623.7
1724.7
1825.7月の赤緯が最北 月の距離が最近 はくちょう座κ流星群が極大
1926.7細い月と金星が接近(明け方の空)
2027.7
2128.7
220.4新月 北アメリカで皆既日食(アメリカでは21日)
231.4処暑(二十四節気)
242.4
253.4細い月と木星が接近 月が天の赤道を通過(南半球へ)
264.4
275.4
286.4伝統的七夕(旧暦のたなばた)
297.4上弦の月
308.4月の距離が最遠
319.4

8月の星図

8月の星空(背景黒)

8月の星空(背景黒)

8月の星空(背景白)

8月の星空(背景白)

8月の中旬、午後9時ころの星空です。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。