ちあきの星空コラム
第161回 月を見る日、星を見る日 (2016/12/01)
月と星は一緒に見られるか?
冬がやってきました。関東地方では晴天率が高くなり、星空がきれいに見られる時期となります。
西高東低の気圧配置になり木枯らしの吹く夜ほど星がまたたいて美しく見えます。
ところが、満月のような大きな月が出ているときは、じつは星があまり見えません。
つまり、月明かりが星座さがしのじゃまになるということなのですが、特に支障となるのは満月や満月に近いときの月明かりといえます。
下部に掲載している「12月の星空」に月齢が掲載されていますが、午後9時ころに星空を鑑賞する想定で考えますと、月明かりが支障になるのは、12月6日頃から12月18日頃までの期間となり、星空を見るのに適しているのは12月の最初のころと下旬が適しています。
なお、月明かりがあるときでも、月の形がバナナのように細い形状に見えるときはあまり支障になりませんし、支障がある満月前後でも1等星や2等星は見ることができますので、冬の大三角とか冬の大六角形(冬のダイヤモンド)といった明るい星を結ぶ形状はさがすことはできます。
星座観察の日程などを決めるときはこうしたことを踏まえた上で日程を決め、寒くない格好をして星空を楽しんでください。
今年はふたご座流星群は見られるか?
毎年、12月14日はふたご座流星群の流星が流れることで有名ですが、今年はなんと満月の夜と重なっています。
では、流星群は見られるのでしょうか?
月明かりがあろうとなかろうと流星は流れますが、問題は鑑賞する私たちの星を見る条件が悪いので、数多くは見えないことでしょう。
満月の明かりのせいで、夜空に見える星の数が極端に少なくなります。明るい1等星などは見えても暗い星は全く見えません。
ということは、流れ星も同様で、特に明るい流れ星のみは見ることができるものの暗い流れ星は見えないということですね。
なるべく多くの流星を見ようとすれば、視野の中に満月を直接入れないで、満月を背にして星空を仰ぎ見ましょう。午後8時ころといった比較的早い時間帯では東の空にある月を背に天頂(天の真上)から西の空を見るようにするといいでしょう。
逆に夜半を過ぎて明け方までは、月明かりを背にすると東の空を見ることができますので、東の空を観察しましょう。
こうした工夫と寒さ対策をして、ぜひふたご座流星群の流星をチェックしてみましょう。
12月月初めに見られる月と惑星のショー
11月29日が新月でしたので、12月に入ると夕方の西空に細い月が見え始めます。
12月1日には南西の地平線近くに水星が見られます。午後5時ころには高度角5度くらいの位置にあり、高度角10度くらいの位置に月齢1.8の細い月が見られます。
12月2日には月がやや高い位置に移動し、3日には月齢3.8の月の近くには金星が輝きます。
12月5日には高度の高くなった月のそばには火星が輝いています。
毎日観察できると、日々、月が膨らんでいく様子と月の移動に加え、西空の惑星たちとの位置関係を観察することができます。
12月の星空
12月は晴天率も高く、寒空の中に美しい星々の輝きを見ることができます。
星座をさがすには、星図や星座早見を使いますが、簡易的には本コラムの星図を拡大表示し、印刷して利用してもいいでしょう。
実際の観察では、南の方向に向いて星図を正面に持って星座と対比します。
星図の右側、すなわち西の方向には秋の星座が見られ、左側(東方向)には冬の星座が見られます。
天頂付近にある秋の四辺形(ぺガスス座)を最初にみつけ、その付近の星座からさがしていきましょう。
秋の星座では、夏の大三角や冬のオリオン座に見られるような明るい星はなく、2等星や3等星を結んでできる星座の形をみつけることとなります。みずがめ座から南のうお座をみつけることができれば、次はくじら座やうお座をさがしてみましょう。
北の空には、夏の星座の白鳥座から北に伸びる天の川沿いにカシオペヤ座やペルセウス座をさがしましょう。
事前にプラネタリウムなどで練習しておいた方が見つけやすいかもしれませんね。
星々は、ゆっくりした日周運動で位置を少しずつ変えていきますが、その様子を確かめるには、1時間程度の時間をおいて同じ位置から同じ星座を眺めてみると、どの星も東から西へ動いたことがわかります。
さらに、明け方に星空を眺めてみると星座の位置がずいぶん移動したことに気づきます。
秋の夜長には温かい飲み物でも用意して、自宅のベランダなどからじっくりと星座探しを楽しみましょう。
12月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 木 | 1.6 | |
2 | 金 | 2.6 | 月の赤緯が最南 |
3 | 土 | 3.6 | 細い月と金星が接近 |
4 | 日 | 4.6 | |
5 | 月 | 5.6 | 月と火星が接近 |
6 | 火 | 6.6 | |
7 | 水 | 7.6 | 大雪(二十四節気)上弦の月 |
8 | 木 | 8.6 | |
9 | 金 | 9.6 | 月が天の赤道を通過(北半球へ) |
10 | 土 | 10.6 | |
11 | 日 | 11.6 | 水星が東方最大離角 |
12 | 月 | 12.6 | |
13 | 火 | 13.6 | 月の距離が最近 |
14 | 水 | 14.6 | 満月 ふたご座流星群が極大 |
15 | 木 | 15.6 | 月の赤緯が最北 |
16 | 金 | 16.6 | |
17 | 土 | 17.6 | |
18 | 日 | 18.6 | |
19 | 月 | 19.6 | |
20 | 火 | 20.6 | |
21 | 水 | 21.6 | 冬至(二十四節気)下弦の月 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
22 | 木 | 22.6 | |
23 | 金 | 23.6 | 天皇誕生日 月と木星が接近 |
24 | 土 | 24.6 | |
25 | 日 | 25.6 | 月の距離が最遠 |
26 | 月 | 26.6 | |
27 | 火 | 27.6 | |
28 | 水 | 28.6 | |
29 | 木 | 29.6 | 新月 月の赤緯が最南 |
30 | 金 | 0.8 | |
31 | 土 | 1.8 |
12月の星図
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。