ちあきの星空コラム
第160回 スーパームーンを見る (2016/11/01)
11月14日は満月(スーパームーン)
満月はとても明るく、都会では街灯などが完備しているところが多いので、夜の歩行に困ることはありませんが、郊外地や山間部などに行くと満月はとても明るく感じられ、重宝されます。
街灯が完備する前の時代までは夜の活動には月明かりがある夜とない夜では懐中電灯やその前の時代には提灯の準備をするかしないかといった判断が必要で、生活に大きく関わっていましたし、海の潮の満ち引きにも月齢が大きく関係していましたから、月が生活に密着していたことが想像されます。
現在の都会生活では日常生活に月明かりなどは関係ありませんから月齢にも無頓着ですが、満月の中でも特に大きく見えるスーパームーンには注目する人が多いようです。月は楕円軌道で公転していますが、月の軌道が地球に近づいたときに満月を迎えると大きく見える満月となるのです。
このスーパームーンという言葉は、天文学の用語ではありませんが、多くの方々が月に親しんでいただく要因になりました。そうした面では功労賞をあげたい言葉といえます。
満月の夜は視力の良い人は月の表面に濃淡があり、黒っぽい部分がウサギの姿に見える人もいます。双眼鏡や天体望遠鏡ではそのパターンもはっきり見えますが、明るすぎるので、口径を絞るとかムーングラスを取り付けて見ないと眼を傷めることがありますので、注意しましょう。
満月の特徴としては、天体望遠鏡で見たときにクレーターが見えにくいことがあげられますが、これは太陽の光が正面から当たって、影がないことに起因していますが、その影がなくても満月のころに目立つようになるクレーターもあります。それは、ティコ、コペルニクスそれにケプラーなどで、クレーターから四方八方にすじ状の輝く光条が出ている様子を確認できます。
ぜひ確かめてみましょう。
11月の天文現象
流星群は見られるか?
11月にはおうし座流星群としし座流星群が出現します。
おうし座流星群は、長期間見られますが、11月6日ごろが南群の極大日で、おうし座の胸のあたりを放射点として空のあちこちに流星が流れる様子が見られます。もうひとつの北群は、11月13日ごろが極大日となります。放射点はおうし座の散開星団M45(プレアデス星団、和名はすばる)の近くにあります。極大日以外の日もそれなりに流れ、11月上旬から中旬にかけて楽しめる流星です。
もうひとつ、有名なしし座流星群ですが、11月17日に極大日となりますが、満月過ぎ(月齢18)の月明かりにより星空が見にくく、ちょっと条件が悪い観測となりますが、どうしても見ようとすれば条件の悪いことを覚悟のうえで、防寒を十分にして、夜空を見上げて見ましょう。
アルデバラン食の観測
満月を過ぎて間もない丸い月におうし座の1等星アルデバランが隠される現象が見られます。
肉眼では見にくいものの、双眼鏡や天体望遠鏡を使えばはっきりと見えます。
見られるのは11月16日の午前2時過ぎに月に潜入して、午前3時過ぎに出現します。詳細な時間は、それぞれに地域で異なりますので、インターネットなどで検索してみるといいでしょう。
下の写真は今年の2月16日に見られたアルデバラン食です。潜入ではスッと星の姿が消え、出現の時は突然現れます。天体望遠鏡で生のシーンを見る臨場感は何ものにも代えられない感動ものですから、お天気が良かったら見てみましょう。
11月の星空
11月の夜空はすっきり晴れることが多く、秋の星座を堪能できます。
星座をさがすには、星図や星座早見を使いますが、簡易的には本コラムの星図を拡大表示し、印刷して利用してもいいでしょう。
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 火 | 1.4 | 月の距離が最遠 |
2 | 水 | 2.4 | |
3 | 木 | 3.4 | 文化の日 細い月と金星、土星が接近 |
4 | 金 | 4.4 | 月の赤緯が最南 |
5 | 土 | 5.4 | |
6 | 日 | 6.4 | 月と火星が接近 おうし座南流星群が極大 |
7 | 月 | 7.4 | 立冬(二十四節気) |
8 | 火 | 8.4 | 上弦の月 |
9 | 水 | 9.4 | |
10 | 木 | 10.4 | |
11 | 金 | 11.4 | 月が天の赤道を通過(北半球へ) |
12 | 土 | 12.4 | |
13 | 日 | 13.4 | おうし座北流星群が極大 |
14 | 月 | 14.4 | 満月(スーパームーン) |
15 | 火 | 15.4 | |
16 | 水 | 16.4 | アルデバランの食 |
17 | 木 | 17.4 | 月の赤緯が最北 しし座流星群が極大 |
18 | 金 | 18.4 | |
19 | 土 | 19.4 | |
20 | 日 | 20.4 | |
21 | 月 | 21.4 | 下弦の月 |
22 | 火 | 22.4 | 小雪(二十四節気) |
23 | 水 | 23.4 | 勤労感謝の日 |
24 | 木 | 24.4 | 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
25 | 金 | 25.4 | 細い月と木星が接近(明け方の東空) |
26 | 土 | 26.4 | |
27 | 日 | 27.4 | |
28 | 月 | 28.4 | 月の距離が最遠 |
29 | 火 | 29.4 | 新月 |
30 | 水 | 0.6 |
11月の星図
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。