ちあきの星空コラム
第159回 来年の皆既日食 (2016/10/03)
来年の夏休みにアメリカで皆既日食が見られる
来年の話をすると鬼が笑うかもしれませんが、日食はその現象が起きるときに準備しようとしてもこれが海外での現象であれば、もう間に合いません。
もし、皆既日食を見たいと思うなら、今のうちから準備が必要なのです。
ということで、今月は来年の皆既日食の情報をお届けします。
日本で皆既日食は今後、いつ見られるのかというと、2035年9月2日まで待たなければなりません。「えっ19年も先なの?」とびっくりされるかもしれませんが、ひとつ前の皆既日食もトカラ列島付近で見られるはずだった(悪天候で見られなかった)2009年7月22日のこととなります。
皆既日食は日本からはめったに見ることができない現象で、近々見たいとすれば、海外まで遠征することが当たり前となります。
その海外での日食現象ですが、陸地で見られるといっても未開地のようなところでは快適に見ることができません。
ダイヤモンドリングやコロナそれにプロミネンスといった皆既日食の時しか見られない天文現象は、現世におけるもっとも美しい光景といわれています。
こうした現象が見たいという気持ちに応えるとすれば、来年のアメリカ大陸を横断する皆既日食がお薦めといえるのです。
このアメリカ大陸を横断する皆既日食が見られるのは2017年8月21日。夏休み期間中なので家族で出かけるにも好都合といえます。
そこで、私は皆既日食のちょうど1年前にあたる今年の8月21日に観測地の下見に行ってきたのです。
出かけたところは、8月の天候がとても良いといわれているオレゴン州。その州都セイラムやオールバニーそれにコーバリスといった皆既日食が見える範囲にある都市を巡ってきました。その中で本命と定めたコーバリスで実際に日食の起きる1年前の太陽位置、高度それに空の状況(お天気)などを確認してきました。
ホテルの庭や駐車場から直接、安全に日食観測が可能というポイントを探し、現地にあるホテルをいくつか廻り、さらにホテルの近くにレストランや食品スーパーなどもあるかどうかなど、調査してまいりました。
私が過去に海外遠征した日食では、小笠原沖の洋上だったり、モンゴルの極寒の中。また、アフリカのザンビアといった日常とはおよそかけ離れた環境での観測が多かったのですが、来年のアメリカ大陸横断の日食は、安心して日食を楽しむことができそうで、期待に胸が膨らみます。
多くの旅行社から来年の日食ツアーが、売り出されるのではないかと思われますが、晴れの確率と快適な観測場所の提供がツアー成立のかなめとなることでしょう。
私が出かける日食ツアーはまだ、内容が決まっていませんがツアーの内容をじっくり検討して快適な日食観測や見物ができるツアーをめざしたいと思います。
今後、発表されましたらこのコラムでも情報としてお伝えしたいと思います。
よろしくお願いします。
10月の天文現象
流星群は見られるか?
10月には10月8日を極大とする10月りゅう座流星群と10月21日に極大日を迎えるオリオン座流星群が見られます。
といっても、8月のペルセウス座流星群や12月のふたご座流星群に比べると流れる流星の数が少ないのですが、それでも流星が見られるチャンスに変わりがありませんから、ぜひ夜空を見上げてみましょう。
天王星を見るチャンス
土星や木星は見たことがある人が多いのですが、天王星となると見たことがない人が大半です。
しかし、この時期、天体望遠鏡を使えば天王星をみつけることができます。
今月に観望好機といえる天王星はうお座に位置し、天体望遠鏡で見ると青緑色(エメラルドグリーン)に見え、他の星とは色の違いから明快に区別できます。
明るさは5.7等星ですから双眼鏡でもみつかるかもしれません。
他の星との色の違いからぜひみつけましょう。
10月の星空
10月に入ると夏の間に観望を楽しんだ土星と火星は段々と西空へ移動し、ついには土星は見えなくなり、火星も地球から遠ざかりつつあることから天体望遠鏡で大きく拡大して見ることができなくなります。
そのかわり、夕焼けの残る西空には宵の明星(金星)が明るく輝いて見えるようになってきました。
また、明け方の東の空には水星や木星が輝いて見られます。
恒星は、秋の星座の星々が天空を飾っています。
明るい星はみなみのうお座のフォーマルハウトひとつだけですが、2等星や3等星を結んでできる星座たちがたくさん見られます。
天頂付近には天馬のかたちのペガスス座が君臨し、近くにはうお座やアンドロメダ座なども見られます。
南の空にはやぎ座、みなみのうお座、みずがめ座、くじら座などが見られ、北の空には、ケフェウス座やカシオペヤ座が見られます。
夜の長くなった10月の空では、ゆっくりと星空を眺めてみましょう。
ギリシャ神話の物語などを愛読し、本物の星空の中に物語の主人公や配役をみつけるのも楽しいかもしれません。
10月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 土 | 0.1 | 新月 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
2 | 日 | 1.1 | |
3 | 月 | 2.1 | |
4 | 火 | 3.1 | 細い月と金星が接近 月の距離が最遠 |
5 | 水 | 4.1 | |
6 | 木 | 5.1 | 月と土星が接近 |
7 | 金 | 6.1 | |
8 | 土 | 7.1 | 寒露(二十四節気)10月りゅう座流星群が極大 月の赤緯が最南 |
9 | 日 | 8.1 | 上弦の月 |
10 | 月 | 9.1 | 体育の日 |
11 | 火 | 10.1 | |
12 | 水 | 11.1 | |
13 | 木 | 12.1 | 十三夜(後の月) |
14 | 金 | 13.1 | |
15 | 土 | 14.1 | 月が天の赤道を通過(北半球へ) |
16 | 日 | 15.1 | 満月 |
17 | 月 | 16.1 | 月の距離が最近 |
18 | 火 | 17.1 | |
19 | 水 | 18.1 | |
20 | 木 | 19.1 | |
21 | 金 | 20.1 | オリオン座流星群が極大 |
22 | 土 | 21.1 | |
23 | 日 | 22.1 | 霜降(二十四節気)下弦の月 |
24 | 月 | 23.1 | |
25 | 火 | 24.1 | |
26 | 水 | 25.1 | |
27 | 木 | 26.1 | |
28 | 金 | 27.1 | 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
29 | 土 | 28.1 | |
30 | 日 | 29.1 | |
31 | 月 | 0.4 | 新月 |
10月の星図
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住