ちあきの星空コラム
第140回 一番星 (2015/03/02)
一番(いちばん)星(ぼし)をみつける
3月になると、夕日が沈む時刻がだんだんと遅くなっていきます。
午後6時をすぎてもまだ空は明るく星空が望めません。3月のはじめで午後6時40分頃。3月末には午後7時頃にようやく薄明から全天が暗い星空になります。
しかし、一番星は日没後、空がまだ暗くならないうちから見え、午後6時頃から探すことができます。
その一番星はどの星でしょうか。快晴の空では西空に輝く金星です。宵(よい)の明星とも呼ばれ、きらきらと輝く様子がとても印象的な星です。
しかし、今年は、木星が東の空に見られ、これもとても明るいのです。等級でいうと金星の方が明るいのですが、夕焼けの明るさが残る西空と違い、闇が早く訪れる東の空の方が発見しやすく、木星の方が早く見え始める星(つまり一番星)となることもあります。
さらに、3番目に明るく見えるのが、恒星で最も明るいおおいぬ座のシリウスです。
等級でいうと-(マイナス)1.4等級なので青白いその輝きはとても明るく、冬の星座の1等星であるオリオン座のベテルギウスやリゲルと比べても格段の明るさを有していることがわかります。
3月ともなりますと寒さも和らぎ、歩くのをちょっと休めて星空を仰ぎ見たいものです。そうした時は、今までは星座早見や星図を見ることをお奨めしていましたが、最近は、スマートフォンなどで星座の案内をする無料のソフトがダウンロードできます。そのソフトを使えば、スマートフォンなどを夜空にかざすことによって、その方向の星空や星座がわかる便利な機構を備えています。
なお、本コラムで使用している天文シミュレーションソフトは、パソコン用のステラナビゲータ10(アストロアーツ製)を使用しています。
春の大曲線から星座をみつける
春の星座は冬の星座と比べるとみつけにくいといわれます。
冬の星座ではオリオンの三ツ星のようにだれでもその特徴からすぐにみつけられる星座がありますが、春の星座にはそうした特徴はありません。
そこで、ひと工夫。北斗七星(おおぐま座の一部)から星座をみつける方法があります。
まず、北斗七星をみつけましょう。北斗七星はオリオン座に次いでみつけやすい星の配列なのですが、もし、わからない方がいらっしゃいましたら、3月の星空では、午後9時頃には北東の空、高度角45度くらいのところにありますので、さがしてみましょう。
北斗七星がみつかりましたら、北斗の柄の曲がり具合を図と写真で示すように空の中でなぞって星空の中をたどっていくと、うしかい座のアルクトゥールス(1等星)がみつかり、さらに曲線を延長していくとおとめ座のスピカ(1等星)をみつけることができます。
じっさいの星空の中で確かめてみましょう。
予告編 4月4日皆既月食を見よう
来月のことですが、4月4日(土)に皆既月食が見られます。
しかも、夕方、東の地平線から月が昇ってくる午後5時59分ころにはじまり、皆既月食となるのが午後8時54分頃。皆既食の時間は約12分。午後9時6分ころには皆既食が終了し、部分食となって、深夜12時ころにすべてが終了します。
みなさんが起きている時間帯に見られる月食なので、より多くの方々に見ていただけると思います。
月食を見るのには、星を見るのとちがって、夜空の暗く見えるところまで出かける必要もありません。自宅の庭などからゆったり眺めればいいでしょう。
しかも、皆既食が12分間継続しますので、瞬間的な現象とちがい、家族も一緒に見られる可能性大といえます。今のうちから日程を空けて皆既月食をぜひ楽しんでください。
3月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 日 | 10.1 | |
2 | 月 | 11.1 | |
3 | 火 | 12.1 | |
4 | 水 | 13.1 | しし座π星の食 |
5 | 木 | 14.1 | 月の距離が最遠 金星と天王星が最接近 |
6 | 金 | 15.1 | 啓蟄(二十四節気)満月 |
7 | 土 | 16.1 | 月が赤道通過(南半球へ) |
8 | 日 | 17.1 | 木星の衛星ガニメデがカリストを隠す(部分食) |
9 | 月 | 18.1 | 木星の衛星ガニメデの影にカリストが入る(部分食) |
10 | 火 | 19.1 | |
11 | 水 | 20.1 | |
12 | 木 | 21.1 | |
13 | 金 | 22.1 | 月と土星が接近 木星の衛星イオの影にガニメデが入る(金環食) |
14 | 土 | 23.1 | 下弦の月 月の赤緯が最南 |
15 | 日 | 24.1 | 木星の衛星エウロパの影にイオが入る(部分食) |
16 | 月 | 25.1 | |
17 | 火 | 26.1 | 木星の衛星イオの影にエウロパが入る(部分食) |
18 | 水 | 27.1 | |
19 | 木 | 28.1 | 月の距離が最近 |
20 | 金 | 29.1 | 新月 木星の衛星イオの影にガニメデが入る(部分食) 月の距離が最近 月が天の赤道を通過北半球へ |
21 | 土 | 0.7 | 春分の日 春分(二十四節気) 月が天の赤道を通過(北半球へ) |
22 | 日 | 1.7 | 細い月と火星が接近 |
23 | 月 | 2.7 | 細い月と金星が接近 |
24 | 火 | 3.7 | |
25 | 水 | 4.7 | 水星が西方最大離隔 |
26 | 木 | 5.7 | 月の赤緯が最北 月とアルデバランが接近 |
27 | 金 | 6.7 | 上弦の月 |
28 | 土 | 7.7 | 木星の衛星イオの影にガニメデが入る(部分食) |
29 | 日 | 8.7 | 木星の衛星エウロパがイオを隠す(部分食) |
30 | 月 | 9.7 | |
31 | 火 | 10.7 |
3月の星空
3月の星空は、冬の星座から春の星座に移行していく時期なので、両方の星座を楽しむことができます。下の掲げる星図を参照していただくとわかりますが、南の方角を見て、右半分(西の方面)は冬の星座、左半分(東の方角)には春の星座が輝いています。
星図をプリントして夜空で星座を確認してみましょう。
画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。
このコラムに用いている星図やシミュレーション画像は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています。
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。