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ちあきの星空コラム

第129回 火星接近 (2014/04/02)

4月14日火星接近

大接近時にとらえた火星の表面模様

大接近時にとらえた火星の表面模様

先月のコラムでもお知らせしたとおり、火星が地球に接近しています。
今月14日に最接近を迎えますので、ぜひ観察したいものです。
位置は、おとめ座の中にあり、おとめ座の1等星スピカの近くで煌々(こうこう)と輝いています。明るさは-(マイナス1.5等級です。
しかも赤々したその輝きは他の星と比較するとはっきりその違いがわかります。

スピカは白く、アルクトゥールス(うしかい座)はオレンジ色に輝いて見えますから、色のちがいを観察してみましょう。
火星の見える場所は、星座の中で、少しずつその位置を変えていきます。理由は、観察する私たちは太陽の周りを約365日で公転する地球上から観察しますが、火星もやはり太陽の周りを回っており、約687日で公転していますから、相互の動きから、背景に見える星座の中を移動していく様子として見られることになるのです。
したがって、地球と火星が接近し合うのは2年2か月周期ということになります。
今回の地球と火星の接近距離は9200万キロメートル。近いのか遠いのか判断に迷いますが、大きさは、視直径で15.2″(秒)に見えます。天体望遠鏡では、口径8センチ以上の望遠鏡を用い、100倍以上の倍率で観察すれば、表面の模様も気流の条件が良ければ見えることでしょう。
なお、最接近の4月14日だけが大きく明るく見られるわけではなく、だんだんと近づき、ゆっくり遠ざかっていきますから、最接近の日でなくても4月中はずっと観察が可能です。肉眼での観察では、恒星との色や明るさのちがいを観察しましょう。また、恒星との位置関係を観察し、日々、移動している様子を記録しましょう。天体望遠鏡を使った観察では表面模様が火星の自転のよって変化していく様子を観察してみましょう。

最接近の日(4月14日)の火星の位置は、おとめ座スピカの近くにあり、 その日はたまたま満月直前の明るい月が輝いています

最接近の日(4月14日)の火星の位置は、おとめ座スピカの近くにあり、
その日はたまたま満月直前の明るい月が輝いています

今年の春は惑星観測シーズン

今年の春は「惑星観測シーズン」といえ、火星のほか、夕空に木星、深夜に土星そして明け方に金星を見ることができます。
いずれも星座をかたちづくる恒星よりも明るく輝いていますので、すぐにみつけられます。
星図にない明るい星が見られたら惑星だと思っても差支えないでしょう。
木星は冬の星座ふたご座の中にあり、夕空の一番星として見ることができ、-2.1等級のとても明るい輝きを持ち、恒星がちかちかと瞬いて見えるときもあまり瞬かないでボーと輝いているような特徴的な見え方をしていますので、すぐにわかります。
天体望遠鏡では木星本体の模様のほか、周囲にガリレオ衛星も見ることができます、
土星は0.1等級の輝きで、てんびん座の中にみつけることができます。
環をもった独特のかたちは、天体望遠鏡を使うと見られ、衛星のタイタンもみつけることができます。
金星は明け方に明けの明星として、夜明けの前に圧倒的な明るさを持って輝いていますので、すぐにみつけることができます。明るさは-4.2等級です。

今年の春に見られる惑星の写真(撮影:浦辺守)

今年の春に見られる惑星の写真(撮影:浦辺守)

明けの明星と月の接近するシーン

今月も4月25~26日の明け方に明けの明星と細い月が接近している神秘的な様子を見ることができます。
先月も下旬に同様なシーンが見られましたので、お天気の良かった3月28日に早起きをしてその様子を観察し、また、撮影もしました。朝もやの中、東の空に弓状の細い月と明けの明星が輝いているシーンを三脚に据えたデジタル一眼レフカメラで撮影したのが、下の写真です。
ずっと見ていると、だんだんと夜が明けてくる中、明るく輝いていた金星の姿も、薄明の明るさの中に溶け込み、やがて、朝焼けの中に消えていきました。その後も月の姿はしばらく見えて名残惜しそうに輝いていました。
4月25日の様子をシミュレーション画像で掲げておきますので、25日か26日にぜひご覧になられてデジタルカメラなどで撮影してみましょう。

3月28日の午前5時30分に撮影した月と金星の姿です。朝もやの中、幻想的に輝いていました

3月28日の午前5時30分に撮影した月と金星の姿です。朝もやの中、幻想的に輝いていました

今月は、4月25日前後の明け方に細い月と金星の輝きを同時に見ることができ、もっとも月と金星が接近するのは4月26日です。このシミュレーション画像は4月25日午前5時の東南東の空を見たときの様子です

今月は、4月25日前後の明け方に細い月と金星の輝きを同時に見ることができ、もっとも月と金星が接近するのは4月26日です。このシミュレーション画像は4月25日午前5時の東南東の空を見たときの様子です

4月の天文情報

曜日月齢天文現象など
1.3
2.3
3.3
4.3
5.3清明(二十四節気) 月の赤緯が最北
6.3
7.3上弦の月 ふたご座λ星の星食(月に隠される)
8.3月の距離が最遠
9.3
1010.3
1111.3
1212.3
1313.2月が天の赤道通過(南半球へ)
1414.3火星の地球最接近
1515.3満月 皆既月食(東日本で月出帯食として見られる)
1616.3
1717.3
1818.3
1919.3月の赤緯が最南
2020.3穀雨(二十四節気)
2121.3
2222.3下弦の月
2323.3月の距離が最近
2424.3
2525.3
2626.3月が天の赤道通過(北半球へ)
2727.3
2828.3
2929.3新月
300.9

4月の星空

4月には春の星座が空一面に見られます。
天頂付近にはおおぐま座の一部である北斗七星がとても目立ちますので、みつけてみましょう。北斗の柄を東南の方向に伸ばしていくとうしかい座の1等星アルクトゥールスのオレンジ色の輝きがみつかります。さらに南の方に目をやりますと、おとめ座の1等星スピカとその近くに火星が輝いているのをみつけることができます。
南の空にはさらにうみへび座、からす座そしてコップ座などが見られ、天高くかに座やしし座もみつけられることでしょう。
星図をたよりに春の星座をさがしてみましょう。

4月の星空(背景黒)

4月の星空(背景黒)

4月の星空(背景白)

4月の星空(背景白)

4月中旬、21時ころの星空です。月の位置及び月明かりの影響は略しています。画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。このコラムに用いている星図やシミュレーション画像は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ9」を使用しています

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。