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ちあきの星空コラム

第84回 夏の大三角と七夕の星 (2010/07/05)

夏休みの宿題

夏の大三角は、夏の夜空でもっとも明るいベガをみつけ、天の川の中のデネブと天の川のベガの対岸にあるアルタイルをさがして、線で結びます。すると写真で示す三角定規のような三角形をかたちづくることができます。

小学生の夏休みの自由研究では昆虫採取などが人気の高いテーマとなっていますが、今年は、国際宇宙ステーションに日本人宇宙飛行士が搭乗した話題や、小惑星イトカワからカプセルを帰還させた宇宙船はやぶさの快挙などにより宇宙に対する人気が高まってきています。

宇宙や星のことで夏休みの自由研究テーマとして考えると、いくつもテーマがみつかりますが、ここでは「夏の大三角」をかたちづくる三つの星から、こと座、わし座、はくちょう座をじっさいの夜空でみつけることをお子さんにおすすめします。

そのためには、夏の大三角をかたちづくる星の名前、位置、形、星の明るさなど。さらに七夕の星との関係などを調べて、星々が輝く夏の星空の中から夏の大三角をみつけ、観察していただきたいと思います。

夏の大三角と七夕の星

織姫星(織女)と彦星(牽牛)は、こと座のベガとわし座のアルタイルのことで、上の写真(同一写真です)と比べて確認しましょう。

夏の大三角と七夕の星は、じつは深く関係しています。

では夏の大三角と七夕伝説に出てくる天の川や織姫星、彦星がじっさいの空ではどのような関係なのでしょうか?

星図や写真をたよりに、夜空の無数に輝く星々から夏の大三角をみつけましょう。一見どれがどの星かはわかりにくいように感じますが、明るい星どうしの位置関係から星を特定していくことで、だんだんと星が特定できるようになります。

夏の夜空でもっとも輝く星、こと座のベガは天頂付近で明るく輝いていますので、これをまずみつけましょう。次に周囲に2個ある1等星と結んで三角形をつくってみましょう。こうしてかたちづくられるのが、夏の大三角です。

こと座のベガ、わし座のアルタイルそしてはくちょう座のデネブの3星で構成されますが、この星の中のこと座のベガは、七夕伝説でいうところの織姫星なのです。では彦星はどれでしょうか。彦星はわし座のアルタイルのことなのです。

夏の大三角をみつけるときに用いる星図です。上の写真と照らし合わせながら夜空で確認してみましょう。星図はアストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」から出力して加工したものです。

煌々と輝く0等星ベガは、とても崇高な白い輝きを放っています。天の川を挟んで、対岸に位置する1等星アルタイルとは七夕の伝説にいわれるように、天の川を挟んで輝いており、1年に1度、7月7日の夜にしかデートができないといわれています。
なお、現在の暦では、7月7日はまだ梅雨の真最中で、なかなか七夕の星を見ることができませんが、明治時代の初期まで使われていた旧暦に換算して今年の七夕の日を調べてみますと、今年は8月16日となります。8月16日の旧暦7月7日七夕の日では梅雨も明けて七夕の星が見やすいことでしょう。

新旧の七夕の日に限らず、晴れていれば毎夜七夕の星(夏の大三角)は見えますので、晴れた夜をあおぎ見て、夏の星座を楽しみましょう。

夏の大三角に関する展示をおこないます

私は、天文ボランティアグループ「こども星見隊」の仲間と一緒に牛久自然観察の森(茨城県牛久市結束町)で、夏休み期間中、「夏の大三角をみつけよう」というテーマの展示を行い、子供さんの自由研究のお手伝いおこないます。

じっさいには、夏の大三角の探し方などを観察の森にあるネイチャーセンターの掲示ボードで写真と図などで解説をおこないます。

牛久自然観察の森にお出かけの際にはぜひ、その展示を見ていただきたいと思います。

今月も金星が美しい

月と金星

6月16日の夕闇が迫るころ、雨上がりの空に月と金星が輝いて見えました


先月のコラムでも月と金星の接近についてはお知らせしましたが、
今月もまた、夕空に美しい星の輝く光景を見せてくれます。

7月14日の夕方には細い月と金星のほかに土星と火星、それに水星も一緒に見ることができます。

写真は先月6月16日の月と金星です。牛久沼のほとりで撮影しましたが、湖面に月と金星の光が反射している様子が写っています。

7月の天文情報

曜日月齢天文現象など
18.7月の距離が最遠
19.7半夏生(太陽黄経100度)
20.7月が天の赤道を通過(北半球へ)
21.7下弦の月
22.7  
23.7地球が遠日点通過(地球と太陽の距離が最も離れる)
24.7小暑(二十四節気)
25.7 
26.7月とプレアデス星団の接近(夜明け前の東天)
1027.7月が最北
1128.7 
120.3新月 
131.3月の距離が最近
142.3細い月と水星、金星、火星及び土星が夕方の西空に集合
153.3 
163.3月が天の赤道を通過(南半球へ)
175.3 
186.3上弦の月
197.3 
208.3夏の土用(太陽黄経117度)
219.3 
2210.3月が最南
2311.3大暑(二十四節気)
2412.3 
2513.3 
2614.3満月
2715.3 
2816.3 
2917.3 
3018.3 
3119.3水星、金星、火星及び土星が夕方の西空低空に集合

7月の星座

7月の上旬は梅雨で星が見えにくい日が続くことがあります。

7月7日の七夕も星空が望めないことが多いのですが、天気予報を見ながら晴れ間が見えるようでしたら織姫星と彦星をさがしてみましょう。

7月も夏休みに入る下旬近くになると、晴れる日も多くなりますので、空気の澄んだ夜には天の川もさがしてみましょう。もし、天の川が見えなくても、夏の大三角を中心に夏の星座を見つけましょう。

天空付近では夏の大三角の星をもつ、こと座(ベガ=織姫星)、わし座(アルタイル=彦星)それにはくちょう座(デネブ)のほか、ヘルクレス座、かんむり座、こぎつね座、いるか座、へびつかい座などをみつけることができます。

星座早見盤などをそろえるか、あるいは下に掲げる星図を参照しながらより多くの星座をみつけてみましょう。
下に掲げる星図を参照しながらより多くの星座をみつけてみましょう。

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。
※このコラムで使用している星図は、(株)アストロアーツの天文シミュ レーションソフトステラナビゲータ.8から出力し、加工したものを使用しています。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。