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ちあきの星空コラム

第109回 今月は金星食が見られる (2012/08/06)

伝統的(でんとうてき)七夕(たなばた)は8月24日

8月の星空は、天頂付近に輝く3個の1等星に代表されます。
3個の星は、こと座のベガ(実は1等星よりも明るい0等星)、わし座のアルタイルそして、はくちょう座のデネブです。

夏の大三角

夏の大三角:天頂の天の川付近に夏の大三角はみつかります。光害で天の川が見えない所でも夏の大三角の星は確実に見えますので、さがしてみましょう。

夏の大三角

星図でみる夏の大三角:ベガは織姫星、アルタイルは彦星。デネブは天の川の中にあります。(この星図は、アストロアーツの許諾を受け、ステラナビゲータ9を使用しています)

原村星まつり

昨年の原村星まつり(今年は8月3~5日に開催)では、七夕飾りを参加者とともにつくりました。短冊のお願いには震災復興の願いもたくさん書き込まれました

デネブのあるはくちょう座は天の川の中にあり、それをはさんでベガ(織姫星)とアルタイル(彦星)をみつけることが夏の星座探しの第一歩といえるでしょう。
さて、このベガとアルタイルにまつわるお話は、織姫と彦星の七夕伝説です。これは遠い昔に中国から伝承されたお話ですが、今では日本でもすっかり根付いています。
しかし、7月7日の七夕まつりはほとんど毎年、梅雨空の模様で星空を楽しむことができません。
この七夕の物語が生まれた中国やその後に伝承を受けた日本での長い過去の時代は、旧暦(いわゆる太陰暦)が使われていました。旧暦の7月7日七夕まつりの時期は、現在に直すとおおよそ8月ころに相当し、7月7日は月齢がだいたい7で、上弦の月の頃に相当するように暦(こよみ)がつくられていたのです。このことは、バックナンバー97号に記載されていますので、そちらもご覧ください。
今年の旧暦の七夕は8月24日(金曜日)に相当しますので、旧暦で祝うとすれば、これから七夕まつりをすることができるというわけです。
地方によっては、ひと月遅れの8月7日を七夕まつりとする地域(仙台七夕まつりなど)もありますし、旧暦7月7日を七夕まつり(伝統的七夕)としてお祝いしようという提唱もなされているところです。

じっさいの星空では、天の川の星々の両脇に位置するベガとアルタイル、それにデネブは都会地でも簡単にみつけることができますが、天の川の様子は、光害(ひかりがい)の少ない郊外に出かけないと残念ながら見ることができません。
天の川は、雲のような不思議な淡い輝きです。
郊外地でも、月明かりが影響するような満月の頃は見えにくくなってしまいますので、天の川を見るときは、月明かりの影響の少ないときにしましょう。
今年の夏、ぜひチャンスをつくって本物の天の川とその両岸で輝くベガとアルタイル(織姫星と彦星)を確かめてみましょう。
また、デジタルカメラ(一眼レフやミラーレス一眼など)では、三脚にセットして撮影すれば夏の大三角を自分で撮影することができます。シャッターを5秒間くらい開いてぜひ撮影してみましょう。

金星食が見られる

5月に金環日食、6月に金星の太陽面通過、7月は木星食と続きましたが、8月は、14日(火曜日)に金星が月に隠される金星食が見られます。
つくば付近では、早朝の午前2時40分過ぎに金星が月に隠される潜入という現象が見られ、続いて午前3時30分ごろ月の後ろ側から出現する様子を観測することができます。肉眼でも十分に楽しむことができる現象ですが、双眼鏡があればもっと迫力のある光景として楽しむことができるでしょう。もちろん天体望遠鏡を使えば、金星も月と同じように欠けた姿(半月状)として見ることができます。

金星食潜入金星食出現

1989年に見られた金星食の写真。金星が月に隠される潜入(左)と出現(右)
金星食潜入2時44分出現3時30分合成

8月14日の潜入、出現の様子のシミュレーション画像

金星食(星景)

1989年に見られた金星食:肉眼でも十分に見ることができました

8月の天文情報

曜日月齢天文現象など
12.9満月
13.9月の距離が最近  月の赤緯が最南
14.9
15.9
16.9月が天の赤道通過(北半球へ)
17.9
18.9立秋(二十四節気)みずがめ座ι南流星群極大
19.9
20.9
1021.9下弦の月 月の距離が最遠
1122.9
1223.9ペルセウス座流星群が極大 月と木星が接近 月の赤緯が最北
1324.9火星がスピカに接近
1425.9金星食
1526.9土星と火星が最接近  金星が西方最大離隔
1627.9水星が西方最大離隔
1728.9新月
180.5はくちょう座κ流星群が極大
191.5月が天の赤道を通過(南半球へ)
202.5みずがめ座ι北流星群極大
213.5
224.5月と火星が接近(土星とスピカも並ぶ)
235.5処暑(二十四節気)
246.5旧暦七夕(伝統的七夕) 上弦の月 月の距離が最近
257.5
268.5月の赤緯が最南
279.5
2810.5
2911.5
3012.5
3113.5満月

※月齢を訂正しました(2012年12月5日)

8月の星空

8月は夏休みなど、休暇が多く、学生はもとより、社会人にとってもお出かけのチャンスも多いことと思いますので、ぜひそうした機会にスターウオッチングを楽しみましょう。
肉眼でも星座さがしや流星観測などが楽しめますし、双眼鏡などを使って天の川の中の星雲星団などを見ていくのも、わくわくするような経験となって充実したスターウオッチングになることでしょう。
星座さがしは、夏の大三角を中心に夏の星座を星図や星座早見を頼りに探してみましょう。
流れ星は、ペルセウス座流星群は8月12日の夜から8月13日の未明ころに最も多くの流星を見ることができます。そのほかにも8月は流星が多く見られる季節ですので、星座さがしなどをおこないながら流星ウオッチングも楽しみましょう。
晴れた夜空に輝く星々を見ると、きっと心の充実につながるでしょうから、ぜひ、星見を楽しむといいでしょう。

8月の星空(背景黒)

8月の星空(背景黒)

8月の星空(背景白)

8月の星空(背景白)

8月中旬、午後9時前後の星空です。月の位置及び月明かりの影響は省略しています。画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。この星図及び本コラムで使用している星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ9」を使用しています
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。